2007年05月23日

意思 by 幻月

 多分初めての主役を張るキャラ。真相は見てのお楽しみ。

「ったくよぉ。何だ、この依頼」
 ぼやき。年のわりに張りのある声がその部屋に響いた。
 投げ捨てるように置かれた仕様書。そこに書かれたそれは、この親父の好みから大きく外れている。ごちゃごちゃと、出来るだけ詰め込みましたといわんばかりのデバイス設計。そんなに詰め込んで使えるというのか。
 そういえば、と親父は思い出す。
 近年作ったデバイスの中で最も出来のよかった物の依頼人についてだ。名は高町恭也。ローンの方は未だに完了していないが、親父にとって久しぶりにいい仕事だった。作り甲斐のあるデバイス、銘を不破。意味を聞けば高町恭也の世界における破れないといことらしい。
 なるほど、良い名だ。
 ふん、と一度鼻を鳴らす。何でも、その青年が今日話がるらしい。この前訪れたばかりだというのにいったいどうしたのか。
 時計を見れば、来ると言っていた時間だった。
「──来たか」
「ええ」
 青年、恭也がドアを開けて入って来たのを確認するように親父は時計から視線を外す。
「で、どうした今回は? 今月分なら貰ったはずだぞ」
「それが、その──」
 恭也にしては珍しく言いよどむ。それは親父を困惑させるのに十分だった。
「何だ、壊したか? それだったら別に俺は怒りゃしねぇ。道具は使ってなんぼ、壊してなんぼだからな」
「違います。──起きろ、不破」
 親父は眉を顰める。不破はストレージデバイスのはずだ。起きろと言って、起動させたところで、基本、決まった受け答えしかしない。
 AIなど、重量や好みの関係で搭載していないのだ。
『はい、恭也』
「あ?」
 親父自身が組んだそれとは違う受け答え。音声からして違っている。何より、その受け答えに知性が感じられた。
 恭也を目を細め睨む。
「こいつは、どういうこった?」
「それを話そうと思い、今日は来ました。説明しろ、不破」
 デバイス不破が一旦間を置いて語りだした。

〜・〜

 話が終わった親父は一つ溜息をついた。ところどころ、端折ってあるようだが追及はしない。もともと、そのような事に興味を持ったわけではないのだ。
 必要なのはこれからだ。
 正直な話、計量化の為にはじめから搭載を考慮していなかったAIが重さを変えずに搭載されてしまったことには感嘆の念を抱くしかない。
 だが、──気にくわない。
 自分の仕事には誇りを込める。それを汚されたとしかとれない状況に親父は問いかける。
「で、お前ぇはどうしたい?」
「消す気はありません」
「だろうな」
 そんなこと聞くまでもないことだ。が、まずは口に出させる。
 け、っと皮肉に笑いを洩らす。
「まぁ、お前ぇさんのデバイスだからよぉ。そこは俺が文句をつける筋合いはねぇ。けど、わかっているだろ?」
「──ええ」
 恭也が頷く。
「不破、いいな?」
『恭也がいいと言うならば、私がどうこういうことではない。道具に意思など存在しないのだかな』
 不破の受け答えに親父が顔を顰めた。
「おい、デバイス。そいつは違うぞ。道具には意思が宿る。それは俺が使っている工具だってそうだ。てめぇ、そいつを理解しろ。俺らが作り上げたものにはな、意思が宿ってんだ」
『…………それは』
「道具には誇りをこめ、意味を宿す。意味は道具に意思をもたらす。すべからく、道具っつうもんはな、使われるって意義と意思を持ってんだ。まして、てめぇはAIだろうに」
 押し黙る不破。
 親父が笑った。
「おーし。まずはそこから教育してやらぁ。話を聞く限り、相当優秀らしいからな。一通りチェックして、だな」
 親父は恭也を見て言う。
「お前ぇ、時間はどのくらい空いてる?」
「今日一日は大丈夫です」
「そいつはいい。みっちり教育してやらぁ」
『きょ、恭也!?』
「不破、俺はお前のことを相棒だと思っている。そのための儀式だと思え。何、通過儀礼というやつだ」
「くくく。しっかり、教育してやる。安心しろ」
 親父は口だけ動かし空気を震わさないようにSIiiiiMPLE IS BEeeeSTと呟いた。まずはそこからだ。
posted by TRASH BOX at 23:41| Comment(9) | TrackBack(0) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拍手のアレですか!
これはデバ爺色に染め上げられた不破の今後に期待せざるを得ない
Posted by SMP?@ at 2007年05月23日 23:50
 きっ・・・・・キターーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これはこの後に来るデバ爺人気再燃の先駆けに過ぎない…
…といいなぁ酸tね
Posted by Raziel at 2007年05月24日 00:06
あれ?もしかして叫ぶの!?リーンの声で不破が叫ぶの!?
Posted by ナニハナクトモ at 2007年05月24日 00:16
あれ?もしかして叫ぶの??リーン声で不破が叫ぶの!?
Posted by ナニハナクトモ at 2007年05月24日 00:18
 
そ、染まるのかっ? そまるのかぁぁぁぁっ?!


Posted by 木藤 at 2007年05月24日 00:33
というか、ここでも広告がクリティカル

工具とか、低コストとか
Posted by シヴァやん at 2007年05月24日 00:59
 またしても広告がCHですなぁ。
 そしてリィンはこのままシンプル党に染まっていくのですね。
Posted by パッサッジョ at 2007年05月24日 08:09
スカウト話以後のはやてとリィンIの会話の中でふとした拍子に片鱗が現れたりすると考えると…

恭也怒られそうだなあwww
止め(られ)なかったこと以外、恭也悪くないのにwwww
Posted by ces at 2007年05月24日 08:36
く…!デバ爺の単純化感染能力はとてつもなく高いぞ!具体的にはSIiiiiMPLE IS BEeeeSTが合言葉。…思いっきり抽象的だ。

それはさておき、デバ爺の本名って不明でしたっけ。
…単純(ゼンシュン)とか、源一(源一)とか?
まあ、デバ爺はデバ爺ですが。
Posted by 通りすがりのヘタレ at 2007年05月24日 22:20
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