2007年05月30日

めぐりかえる by 思考回路一緒

 私は今、最後の日記を書いている……この2年間の、私の歩みの全てを綴っている、この日記の、最後を……。

ドゴーン!!

爆発音が聞こえてくる。どうやら、とうとう彼女たちがここまで入り込んできたらしい。もう、時間は残されていない。私は、最後にたった一行を書き加えると日記を閉ざし、機器の最終調整を済ませ、起動シークエンスを開始させる。
 
バン!!

「フェイトちゃん!!」
「……フェイトちゃん……」
「……なのは……はやて」

ちょうどその時、私の親友たちがここまでたどりつく。
 ――会いたかった気持ちと、会いたくなかった気持ち。半々だな……

「フェイトちゃん!何でこんなことするの!?」
「……こんなこと?」
「そうだよ!こんなことしたら、お兄ちゃんも悲しむよ!」
「……そう、かもね」

 ――生きて居たらね。いや、生きてたらそもそもこんなことしないか……

「なのは、恭也さんは死んだの。もう、3年も前に。……私たちを庇って」
「っ、それは」
「死人は何もできない。動くことも、語ることも、思うことも。……だからね?私は過去に行くの。生きている恭也さんに会うために」

 そのためだけにこの2年間生きてきたんだから……今更、止まることなんてできはしない。




 5年程前、その頃が私の幸せの絶頂期だったのだろう。もっとも、今だからわかるが、その当時の私にはそんな自覚はなかった。――大切なものは、失ってからはじめてその大切さがわかる――そんな言葉が、身に染みた。

 初め、私は彼のことはなのは、そしてはやての兄(そしてちょっと変な人)くらいの認識しかなかった。向こうも妹の友人くらいにしか思っていなかっただろう(実際、そういう接し方しかされなかった)。ただ、ここで困ったことが発生してしまった。私は、なのはの家族である高町家とは家族ぐるみで付き合っていた。なので当然、高町恭也さんとも付き合いがあった。……だからだろう、私は、この二人の高町恭也さんを混同してしまうことがあったのだ。
このままじゃいけないと思った私は、まず、相手(迷子の恭也さんの方)のことを知ることからはじめた。廊下などで会ったら挨拶を交わして、休憩時間に会ったらどんなことでも話しをしてみた。そうしているうちに気づいてみると、仕草、話し方、その他にも二人の相違点はたくさんあった。その中でも私が最も二人が違うと思ったのは……心の在り方。そしてそれは、彼のことを知れば知るほどにわかっていった。
私と彼は色々なことを話した。なのはたち友人のこと、仕事のこと、家族のこと、そして……私のことも、母のことも。すべてを聞いた後の恭也さんの言葉は『そうか』のみだった。不思議だった。なんとも思わないのかとも聞いた。だって、私は普通とは違う。人工生命体なのだから……。彼は質問には答えず、かわりに別のことを話し出した。向こうの家族のこと、自分のこと、そして……死んだ父のことを。私は、恭也さんが何故いきなりそんなことを話し始めるのかわからなかった。その理由を尋ねたら『なに。俺だけフェイト嬢のことを知っていたら不公平だからな』と言われた。……そして、『俺の見方が変わったか?』とも。正直にそんなことはないと答えると、『そういうことだ』と返された。……意地が悪いと思う。まぁ、そんなこんながあって、私は恭也さんと仲良くなっていったのだった。

彼のことが好きだと気づいたのは、エイミィとクロノが結婚した頃。なのはたちとそういう話題をしていると、何故か彼の顔がチラついてしまうのだ。そして、恭也さんと実際に会うと、顔が熱くなって、まともに顔が見れないし、会話も満足にできなくなってしまう。……何故かわからなかった。こんなこと、初めてだったから。でも、こんな状態じゃいけないとも思っていても、どうしていいのか私にはわからない。
数日ほどその状態が続き、恭也さんとまともに話せないことが辛くなった私は、エイミィに相談にいった。……話したときのエイミィの反応は『……馬鹿?』だった。……酷いと思う。でもその後、エイミィはとても優しい顔になり、私に言ったのだ。『ホンとは自分で気づいたほうがいいんだけど……フェイトはね、たぶん、今恋をしてるの』……正直、頭が真っ白になった。そんなこと考えもしなかった。どうすればいいのかもエイミィに聞いたけど、彼女は教えてくれなかった。『自分で考えないと、後悔するだろうから』そんな言葉とともに、追い出されてしまった。
……それからの私は、悩みに悩んだ。それはもう2日間部屋から出なかったほどだ。皆は心配してくれたけど、私にはそれに応えるだけの余裕もなかったのだ。……でも、答えは案外簡単に見つかるものだった。
流石に2日間も部屋に篭っていると外に出たくなるもの。気分転換のつもりで出かけた買い物先で、私は、恭也さんに出会ってしまったのだ。その時はいきなりでまともに考えることができず、パニックになって逃げるように帰ってしまったが、後になって恭也さんと会った時最初に浮かんだ感情……それが、嬉しいだったとわかると、自分の気持ちが見えてくるようになったのだ。まるで、パズルのピースがカチリとはまるように。
――そもそも、私がエイミィのところに相談に行ったのは何故?……恭也さんと話せないのが、辛くなったから。――それ以前に、なんで話せなくなったの?……それは、結婚したい人で彼の顔が、浮かんでくるから。意識してしまって、前に立たれると、どうしていいのかわからなくなってしまうから。――そう。私は、恭也さんのことを意識していたのだ。これだけ時間をかけて私にはやっとわかった。――私は、恭也さんのことを異性として意識しているんだ。……特別な、異性として。

そんなことがあってから、私はよく恭也さんといるようになった。……自分ではさりげなくのつもりだったが、周りから見たらとてもあからさまにだったらしい。(クロノがとっても渋そうな顔してたな。)休日は何をするでもなく一緒にいたし、食事の時間もなるべく合わせるように(時にはお弁当も作ったりした)。……そして、私は恭也さんと付き合うに至ったのだ。

 でも、そんな幸せな時間にも終わりは来る――いや、きて、しまった……。あっけなかった。恭也さんはいくら強くてもFランク。バリアジャケットもつけていない。高レベル殺傷設定の魔法弾に当たったらひとたまりも無い。――『よかった。無事か』……それが、最後に聞いた言葉。……何がよかったのだろう?――私は、これっぽっちもよくなんか無かった。……無事か?――確かに体に傷はできなかった。かわりに、心に二度と埋まらない穴が開いた。でも、これは何も私に限ったことではない。私の周り……恭也さんの知り合いは、皆大なり小なりそうだった。

 一番最初に立ち直ったのは、ヴォルケンリッターの皆。彼女たちはずっと戦いの中にいたから、私たちよりも死というものに対する心構えができていたんだろう。そして次はクロノ……といった具合に皆が立ち直っていく中、私ともう一人だけが立ち止まってしまった。恭也さんに庇われた私――フェイト・テスタロッサ・ハラオウンともう一人――八神はやてだけが。

 それからの私は、しばらくの間自分というものが虚ろだった。勿論、なのはたちがいたからそんな様子を見せないように気をつけてはいたのだが、皆、そんな空元気はわかってるようで、何度となく大丈夫かを聞いてくるのだ。……大丈夫な訳が無い。けど、そんなこと言える筈も無く、大丈夫と返す。恭也さんが死んでから1年間。それを、私は毎日続けたのだ。
 そんな私に転機が訪れたのは、2年前。私は、とある事件の調査で、単独行動をしていた。そして、見つけたのだ。母の――プレシア・テスタロッサの、隠された研究所を。そこには、母の研究の全てがあった。恐らく、他の場所でおこなった結果などもここに転送されるようになっていたのだろう。要するに、バックアップ施設だったわけだ。私がこの研究所を見つけられたのは、奇跡といってもいいだろう。……もしかしたら、母が力を貸してくれたのかもしれない(いや、それはあるわけない、か)。本当なら、ここで報告するべきなんだろう。だが、私は、迷ってしまった……。――この研究成果と、研究所があれば、恭也さんにもう一度会えるかもしれない……と、思ってしまったのだ。勿論、私のように恭也さんのクローンを作る気は無い。欲しいのは――過去に行く方法。
 それから私は、結局この研究所のことを報告しなかった。そしてこの2年間、ひたすら研究を続けたのだ――恭也さんのように、迷いを断ち切って。もう躊躇いはしなかった。その信念が……恭也さんに会うということが生む業を背負うと決めたが故に。


 そして現在。私は犯罪者として追われながらも、研究を終わらせることができた。もっとも、成功率は3割といったところだったが。

「フェイトちゃん」
「なに?」
「もう……とまれへんの?」
「……うん」
「そっか……私な?フェイトちゃんが……正直、羨ましい」
「駄目だよ?……はやてはこっちにきちゃ、駄目」
「……うん。……大丈夫。」
「フェイトちゃん!考え直して!」
「ごめんね、なのは……もう、時間無いんだ」「え?」

 ブォン!と、装置の起動完了音がなる。後一分たらずで、私の居る場所は闇へと消える。なのはたちが何か言っているが、もう、何も聞こえない。
――かえるのこはかえる。つまりはそういうこと。私も、私の母プレシア・テスタロッサ同様、愛する者を失った悲しみに耐えられるほど心の強い人間ではなかった……ということなのだ。だから、私は過去に行く。母の残した方法で。もう一度恭也さんに会う、そのためだけに。
――そういえば、恭也さんのお父さんも恭也さんと同じように誰かを庇って死んでしまったんだっけ……。なんて皮肉な因果の巡り。こんなとこが似てても嬉しくないのに。
……あたりの闇が更に濃くなっていく。――もう、あまり時間は無いかな?皆、さよなら。……ごめんね?声が届かないのはわかっていた。それでも、言わずにはいられなかった。
少しずつ意識が薄れていく。なのはが此方に手を伸ばすのが見えた。――顔が涙でぐちゃぐちゃだ……。彼女にそんな顔をさせてしまった自分が嫌になる。はやては、手を振っていた。……とても、寂しそうな顔で。もう、ぼんやりとしか映らない視界の中で、なのはの手が届きそうになった瞬間、私の意識は途切れた。

――願わくば、もう一度、あの人に……

そんなことを、思いながら……

                                 END






おまけ
 終章の終わり――あるいは序章の終わり

元の世界に帰るために昼間会った女性を探している途中、俺は公園で倒れている女性を発見した。救急車を呼ぼうかとも考えたのだが、外傷は無く、顔色、呼吸ともに安定していたためこの分なら直ぐに目を覚ますとわかり、少しの間この女性の介抱をすることにしたのだった。


ん……ここは……私?
「気がつきましたか?」
!この声は……!
「恭也さん!?」ガバ!

 ――こうして、舞台はメグリカエル。終わりから、始まりへと……

                            To be continue?
posted by TRASH BOX at 00:32| Comment(11) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
再構成ネタの二次創作は見るけども、二次創作の再構成ネタはそうそう見ない。
しかも作者さん本人じゃないのは初めて見ました。うぅむ。あの場にあのフェイトがいるのが、どう絡むのか。成長してるとはいえ面影っつーか、まんまのフェイトだろうし……
というか恭×はや派なのに、フェイトに転びそうな自分がいる……っ
Posted by 熟成 at 2007年05月30日 01:59
 えがった。ディモールトいい!
 もうこのまま再構成かけちゃって突っ走ってもらいたいのだが、その辺どうなのだろう?
 あたしゃ断然応援しますが、展開的にかなり暗雲たちこめそうなヨ・カ・ン♪
 頑張れフェイト! 幸せになってくれればそれでよしです。
Posted by 神薙 at 2007年05月30日 03:47
これは…大小フェイトによる恭也の取り合いフラグ!?
つまり、トラボ風に名づけるならばフェイト丼ということですね!
まあ、大岩さんに怒られてしまいそうな世迷い事は置いておくとして…

でも、このフェイトはどうするんでしょうかね
いるだけで話が元の通りには進まないだろうし、自分がよりによって母親と同様の罪を犯したという確実について回るであろう意識をどうするのか、恭也と会えたからこそ色々考えてしまいそうな気がします
Posted by ces at 2007年05月30日 06:59
ここまで来たらContinueするしかないでしょう!!
Posted by こそあどの森 at 2007年05月30日 07:55
親の子は親の子、恭也もフェイトも結局親と同じ結末に至るのが悲しいっす、そしてこれの続編が激しく見たい……でも単発ネタでも十分楽しかったっすw
Posted by nemuke at 2007年05月30日 08:32
恭也死んだ!?

まぁ、ありえない――と言うか、可能性としては非常に高い未来の一つかなと
StS編がどうなるかはまだ不明確ですが、バリアジャケットも無しに前線で頑張っていたらいつかはそうなるだろうな、と

再構成は難しいでしょうけど、続きがあるなら楽しみですw
もしかしたらこのフェイトが恭×フェイネタでは一番幸せになれる可能性があるのでは?と思ってしまったりw歳の差少ないし?w

GJです。後で聖祥の校舎裏で遭いましょうw
Posted by kagura at 2007年05月30日 08:51
ここの恭也は士郎と同じ道を辿り、フェイトはプレシアと同じ道を往く…か、因果なんですかね。

続編が可能なら是非お願いしたいですね。
Posted by ミヅキ at 2007年05月30日 14:40
かなりよかったです。
んむ、これの続きが気になる。
というわけで、続編を希望。是非に希望。激しく希望。
Posted by 慶 at 2007年05月30日 21:18
えーっと、初めに皆さんすみません。これは読みきりなんで(ほら continue?でハテナついてるし!)、というか頭にネタがぱっと浮かんでしまってそれを勢いのまま書いちゃったんで後にはつづ……かないかもしれないけど頑張って後考えるてみるから続編でなくても許してーー!!

次はなのはのほのぼの、その次は犬シリーズか真八神家になると思うんで、それ終わってから本格的に考えてみます。(あれ?リインEDは?……まァいつか……ね)

というか、三次でここまでやってしまっていいんだろうか?

あとkaguraさん。聖祥の校舎裏には丑三つ時でよろしいですか?
Posted by sikoukairoissyo at 2007年05月30日 22:57
一つだけ、一つだけ教えてくれ……
このフェイトはきちんとポニーテールしてるかい?

いやまあ冗談は置いといて、再構成、イイね。
というか三次でこれやってよかったのかな? 載せてるってことはオッケーってことだよね!
というわけでネタが浮かんだら続編お願いします
Posted by SMP?@ at 2007年05月31日 00:25
うん!凄く先が気になる!
でも、作者さんが言ってた通りこれは読みきりで終わるべきなんだろうな・・凄く残念だが。

自分もSS書いてた頃があったけど、二次ならともかく
三次の場合は、元の作者様の考えた物語の流れや色々な繋がりもあるんで昔から言われてるように三次の世界は読みきり連載は兎も角、再構成はご法度なんだろうとおもってしまう。

よって、凄く好きな逆行物だが連載はやめたほうがいいと思う。
ここの三次はレベルも高いし好きなものばかりだけど
元のストーリーあっての物だし
再構成はそれを壊しかねない、破綻しかねないって危険が有るとおもいますゆえ。残念すぎるけど連載は反対です・・
Posted by koppora at 2007年05月31日 20:25
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