Side八神家
「来月の初頭、結婚することになった」
その日、八神家に夕飯を食べに来た高町恭也は、食後のお茶を飲んでいる時、思い出したかのように言った。
まったりとした空気が漂っており、家主とヴォルケンズもその空気によって、のんびりと返した。
「そうなん?」
「ふむ」
「あら」
「ズズ……」
「わふ」
「お爺さん、結婚するですか」
末っ子の言葉で、まったりした脳ミソが、急速回転を始めた。
「「「「「結婚!!?」」」」」
絶対に有り得ない事象を、ようやく認識した瞬間である。
Side月村家
「そういえば、来月なのよね」
食後のティータイムを楽しむ月村忍は、妹のすずかに尋ねた。
「うん、漸くなのかな。あの人も忙しいし、私としてはもっと素早く話を進めたかったんだけどね」
「十分素早いわよ。大体、交際を始めたっていきなり言われて、その二ヵ月後に結婚する、なんて言うんだから。その上、未だに相手の事は教えてくれないし」
アハハ、と困ったような顔ですずかは返す。
実際問題、この期に及んで未だに妹の恋人とやらが、正体不明なのだ。
本来なら、追及があって然るべきである。
断片的には伝えてあるのだ、
一回り以上、年上だとか
出会ったのは九歳の時だとか
目つきが悪いとか
性格が少々ねじくれているとか
……結婚どころか、交際の段階で反対しないか、普通?
すずかは、よほど信用されているようである。
だが、まあ、幾らなんでもそろそろ潮時である。
色々と話すべき時であろう。
Side八神家
「ごめんな、恭也はん。家族やのに、そこまで恭也はんが追い詰められてるんを、気付けなくて。そこまで強い結婚願望を持っているて気付け無くて」
そう言って、慈母の如き表情で、だがツッと涙を一滴流して、はやてはそっと恭也を包み込む。
「せやけど、現実を見なあかん」
「……はやて嬢、何故俺は慰められなくてはいかん」
「恭也はん、これを見るんや」
「月刊アースラ?」
「間違えた、こっちや」
それは、管理局厚生課の出している情報誌であり、その中のある一面を示された。
「不良物件か」
「それが現実や、だから幻覚の世界からはよ帰って来てや。恭也はんには、うちがいる」
「いや、極めて妥当な評価をされていると思うが」
Side月村家
「前にも言ったけど、あの人と初めて会ったのは、九歳の頃。なのはちゃん達、魔法関係の事件に巻き込まれた時」
「と言うと、その人もそっち関係だったんだ」
「違うの。あの人も、魔法関係の事故の被害者。色々あって、帰る場所を失ってしまった人」
そういって思い浮かべる、姉の愛する人に限りなく近く、だが決定的に違う自分の愛する人のことを。
「最初、惹かれていたとは思うけど……」
「思うけど?」
「それ以上に、恐ろしかった」
笑いをとらずにいられないとか、極めて判り難い優しさを持っているとか色々あるが、それ以上に、家族を失ったことを表情一つ変えずアッサリ受け入れたその様子に、すずかは恐れを抱いた。
家族を失うことに、彼女ならば耐え切れないと思ったから。
其のままであったならば、今の状況は無かっただろう。
Side八神家
「というわけで、幾ら言っても現実に帰還せん以上、ショック療法しかあらへん!!」
「まて!!何をどうしたらそういう話になる」
慌てる恭也をよそに、周囲は準備を終える。
「全ては主の意志のままに」
「少しは自分の考えを持て、紫!!」
「ま、こういうのはブッ叩けば直るって言うし」
「それは昔のテレビやラジオの話だ。最近のは、叩けば壊れるぞ、ヴィータ嬢」
「うふふふふ、まったく、恭也さんは仕方が無いですね」
「旅の鏡!!ぶち撒ける気か!!」
「あきらめろ、恭也」
「黙れ犬」
絶体絶命の窮地、だがここで諦めれば、御神の先達に合わせる顔が無い、だから切り札の一つを切った。
「ザフィーラ」
「何だ?命乞いか、恭「ブランカ」!!?」
恭也の呟いた一言は、ザフィーラの何かにクリティカル。
ザフィーラは、恭也を見つめ返す。
以下、漢と漢のアイコンタクト。
(なに知っている!!恭也!!)
(さて何のことやら)
(ヌウ、どういうつもりだ)
(どうもこうも在るまい、どうやら俺は此処までの様だ。だから、抱え込んでいる秘密を幾つか、洗い浚いぶち撒けようかと)
(何が望みだ)
(望むものは唯一つ、窮地に共に戦ってくれる朋友だな。尤も、俺にそのような者はいないが)
(クッ)
以上、0.01秒の遣り取り。
「……シグナム」
「どうした?ザフィー「すまん」ッ!!」
ザフィーラの拳が、シグナムの腹部に吸い込まれ、其の一撃により意識を失う。
シグナムの体をそっと横たえて、ザフィーラは恭也に歩み寄る。
突然の凶行に、恭也を除く全員が言葉を失う、逸早くヴィータが我を取り戻す。
「ザフィーラ!!てめぇ、どういうつもりだ!!」
「……我は、ヴォルケンリッター盾の守護獣。だが、今は唯の男ザフィーラとして、友のために!!」
振り返ると同時に、言い放つ其の姿は、男という生き物の不器用な生き様が顕れていた。
「すまん」
恭也はただ一言口にする。
「気にするな」
ザフィーラも言葉少なく返す。
一瞬、顔をあわせる。
以下、漢と……省略。
(だから、例の件は他言無用かつ証拠物件は破棄してくれ)
(了解した、しかしよく証拠物件があると思ったな)
(ぬかせ、証拠も無く取引材料として使うわけがあるまい)
(ふ、そうだな。判った俺の持っているものは、責任を以って破棄しよう)
以上0.005秒。
Side月村家
「気付いたのは、なのはちゃんが大怪我をした時。表面上はそれ程でもなかったけど、自分をすごく責めていることを、たまたま知ったの」
あの時、なのはは大した事が無い様に言っていたが、本当に無理をしているのが判った。
だと言うのに、いつもとさして変わらない恭也の様子に、なんか腹が立ってその後を付けた。
そして、己を責める姿を目撃した。
爪が、手のひらに食い込むほど拳を握り締め、いつもの様子からは想像できない苦悩に満ちた表情で拳を壁に叩きつけていた。
普段の恭也ならば気付けた、だが、この時の恭也は自分を見ている視線に、気付くことが出来なかった。
なぜ、なのはの様子に気付けなかった……恭也は苦渋に満ちた言葉を発していた。
「それまで、あの人に会っていたのはアリサちゃんが心配だったから。あの怖い人に、アリサちゃん一人で会わせられないと思ったから。でも、私はあの人が怖い人じゃなくて、悲しいほど頑固な人だって気付いた」
一度、切欠さえ手にすれば後は簡単だった。
元々、人を良く見る性質だったすずかは、それまでの恐怖を伴った色眼鏡を外して、恭也を見るようになって、その本質に近づいた。
頑固なのだ、どうしようもなく、自分の弱さをいつも隠して誰かの弱さを癒す。
自分の傷には無頓着で、誰かの痛みにばかり気を向ける。
そしてそれを微塵とも見せようとしない、それが当たり前になって、気付くことも出来なくなっている。
ふざけた言動と行動、それは演技だったのかもしれない、だけどそれをあまりにも続けすぎて真実になった。
父で、兄で、守護者で、先達で、道化で、でもそれは全部何かを背負い続けることで。
そうやって、たった一人で立っていようとするのに、どうしようもなく寂しがり屋で。
それをも隠して、自分を切り刻んで。
傷を負って傷を負って、でもそれが当たり前で、だから苦痛を感じない、忘れてる。
そんな様子が悲しくて……
Side八神家
「ぐああぁあああああ!!」
「ザフィーラァアアアアァア!!」
「リンカーコアを、ぶち撒けろ!!」
飛針でシャマルを牽制、恭也は一気に神速ではやてに近づき撃沈。
その間ザフィーラはヴィータを押さえ、その後、恭也と一緒に挟撃。
此処までは良かった、だがシャマルの立ち直りの速さと、旅の鏡の展開速度が予想を上回った。
これは拙いと、退避しようとしたが、
「バインド!!こんなに速く!!」
「私とて、何もしてこなかった訳ではないんですよ。恭也さんのリンカーコアは、どんな色なんでしょうねぇ」
万事休す、だが、勇者はいた。
「うおおおおおおおおお!!」
「ザフィーラ!!」
既に、倒れ伏したはずの男が、背後からシャマルを押さえる。
「恭也!!逃げろおおぉお!!」
「クッ!!すまん!!」
逃げながら思う。
自分が保持している証拠物件だけでなく、某提督や某司書長に預けてある物も処理しようと。
外に飛び出す、その時腹部に衝撃が走る。
Side月村家
「私は、あの人の傷になりたくないと思った、あの人に背負われたくないと思った」
だが、恭也にとってすずかは妹たちと同様の存在。
庇護するべき者たち。
その立場がいやで、同格のものとして見てもらいたくて。
ついでに、好きな人になったわけで、男が女にそういったものを覚えるのと同様、女とて男に何某かを抱くわけで。
だから、
「襲っちゃった」
「いや、襲っちゃったって、すずか、あんた」
「だって、そうでもしないとあの壊滅的な朴念仁、意識すらしてくれないし」
「やりようがあるでしょ、大体、言っちゃ何だけどあなたまだ学生だし」
「お姉ちゃんと義兄さんだって、高校の時でしょ」
「状況が違うでしょ、私たちの時は、あくまで双方合意の上で」
「それは無理だよ、すぐそばにはやてちゃんがいるし。アリサちゃんも油断できないし。そもそも一番不利な位置にあるのが私みたいだし。うかうかしてたら、誰かに先を越されちゃうよ」
そういった次第で、関係を持って漸く、恭也はすずかを女として見た。
Side八神家
「ファーター!!」
腹の辺りを見ると、人間サイズのリィンが引っ付いていた。
よく見てみると、髪も瞳も黒にしてある。
そして、
「リィンを捨てないでください!!」
爆弾を投げた。
「リィン、もう悪戯はしません。言うことも聞きます。好き嫌いせずに何でも食べます。良い子になりますから。だから……だから……リィンを捨てないでください!!」
瞳から、ボロボロと涙を流している。
捨てる暇が無かったのか、握った手の中には目薬があるが。
八神家の動乱に気付いた周辺の住民が周りにいて、迂闊に動けない。
そして事態がさらに悪化する。
「リィン!!」
力尽きたザフィーラを振り切り、シャマルが現れた。
そして、リィンを抱きしめる。
この時、二人が邪笑を浮かべたのを恭也は見逃さなかった。
「……ダメなの、もう違うの……恭也さんは…もうお父さんじゃないの……」
「そんなことありません!!ファーターはファーターです、リィンのファーターです」
「ゴメンナサイ、リィン……ゴメンナサイ。もう、ダメなの……あの人は、もう違うの……」
「嫌です、そんなことありません。ファーターは、リィンのファーターは……ウッ、ウッ、ウアァアアァアン!!」
周りの目が、痛い。
腹黒参謀を、甘く見すぎていた。
泣きたい、でも泣けない、だって男の子だもん。
Side月村家
「お姉ちゃん、私ね、ただあの人の泣ける場所になりたいの。誰かがいたら、泣けなくて。でも、一人きりでも泣けない。そんなあの人の、泣くことの出来る場所になりたいの」
「……なんか、子供だと思っていたのに、いつの間にか大人になっちゃったのね」
すずかの言葉に、忍はしみじみと思う。
護っていた妹が、いつの間にか誰かを護ろうとしている。
嬉しくもある、だけど寂しくもある。
なんともいえない気分である。
こうして、二つの家族の夜が耽る。
さとやしさん
一部ネタ、お借りしました。
ところで、四天王って何スカ(汗)
私は一介の流浪の物書きッスヨ。


っと、某☆すたっぽく突っ込みを・・・
両サイドのギャップが激しすぎて、吹き出していいんだか、すずかの一途な思いにもだえればいいのだか悩む作品でした(ぉぃ
ちゅか、てっきり今までの続編の流れということでフェイト相手だろうな〜とおもってるところへの不意打ちだったのでそこら辺もびっくりしましたがwww
いろいろと面白かったです^^
次回もきたいしてま〜す
次回の更新も楽しみにしております。
てか、最後の砦リィン曹長までorz
ツボったのはザフィーラとの友情(?)とリインの攻撃。
これはクるなぁ・・・
やっぱり、すずかが襲ったのね・・・とらボではどの作家さんでも大抵ヘタレな恭也に敬礼!
つうか月村家で2人の恭也独占?!
つーかあれか。恭也は最後のでご近所には奥さん(シャマル)と娘(リイン)を捨てた外道として認定されるのか。
頼むからお前は染まってくれるな。というか染めたのお前だろう緑!!く、せめて赤か紫ならまだ救いが……
ん?実は赤が最後の砦?
ザッフィーは一体なにをやらかして恭也に証拠をつかまれたんだか・・・・・・・ま、なんとなく想像はできますがw
この結婚式当日てあらゆる意味ですごいことになりそうですな〜。
「ブランカ」のネタの意味が分からない
なんのことでしょー?
すずかもなんか黒くなってるし・・・恭也に癒し無し!?
いや、でも、しかし恭也ならそんなすずかとも行けるのか?
とりあえず恭也お前やっちゃったZE☆
ザフィーラは人妻に(人じゃないけど)手を出したと…
そして襲っちゃったすずか嬢に乾杯
たしかにそうしなければ女として見てもらえなかったでしょうけど
とりあえず、GJなんですが…
この続きが、かなり気になるんですけど!!
あぁ、リインが…orz
緑め!緑め!!み〜ど〜り〜め〜!!
八神家唯一の癒し系を返せ!!
俺の癒しの天使を返せ!!(違
そしてすずか…(汗
そんなことしたら、
諦めきれない子が同じように襲っちゃうだろ!?
アリサとか、フェイトとか、悪魔とか!?(エ
激しく続きを期待しています。
何が良いかなナイフ?メス?ダガー?斧?槍?銃?
いっその事全部でいいかwww
しかし恭也、あれで結構マメな所があるから、地球側でもフォローを続けていたという事になるんでしょうか。
恭也と忍の前に、すずかに手を取られて現われる恭也の姿が目に浮かぶようです。
時間無いんで、一括して
リィンはまだ大丈夫です、全ては鉄槌の騎士にかかってます。
すずかは、黒って言うか一途でちょっと暴走しただけです。
ザフィーラのネタですが、この世界ではとりあえず人妻ではないです、そもそも狼王はザフィーラだし。
事に至った経緯は、「悲しい男の性」(What's Michaelより引用)です。
フェイトネタは、今の所、尽きました。
アリサは、姉御肌で結構面倒見がいいので、すずかの策略もあってユーノ、なのはととらいあんぐるハート中です。
すずか編、もう少し続きます。
なんて漢だ、ざっふぃーw
普通にその部分だけは燃えた(ぉぃ
しかし、八神家と月村家での温度差に笑ったw
恭也……お前、家族にそう言う風に見られてたのかっw
結婚式で月村家というと
"狼の矜持 bySMP@"のさくらを思い出しました。
結婚式自体に乱入か、新婚家庭に乱入か…
続き楽しみに待っています。