2007年06月27日

アリサの如く番外〜自動人形は首刎兎の夢を見るか?〜 bySMP@

「じゃ、恭介さん。お茶の用意お願いね」


 すずかちゃんと、久しぶりにすずかちゃんについてきてアリサちゃんの家へ遊びに来た私が一緒に席についた後、対面に座るアリサちゃんの出した指示に机の傍らで控えていた人が応えを返しました。


「承知した。リクエストは?」

「んー、任せるわ」

「私もお任せします」

「そうか、ではティー……」

「当然我が家の優秀な執事は客人をもてなす時にティーバッグなんて使ったりしないわよね?」

「勿論だとも、客人にはきちんと振舞うさ」

「主にもね」

「…………」

「何故そこで『やれやれ手のかかるお嬢様だ』みたいなジェスチャーをするかっ!」

「あの……私はお手伝いさせていただいてもよろしいでしょうか?」


 いきなり始まったコント、いや一方的にアリサちゃんがからかわれているだけでしょうか? とにかく埒が明かなさそうな掛け合いに口をつっこんでみる。すずかちゃんはにこにこと見つめていますけども、仮にも世話役をおおせつかっている私がついていながら主に不自由させるわけにはいきません。
 申し遅れました。私、月村家にて家事手伝いをさせていただいております。ファリン・綺堂・エーアリヒカイトと申します。忍お嬢様、いえ忍ちゃんにすずかちゃんのおはようからおはようまでの世話をするべく開発されましたメイド・イン・忍の機械人形です。……あ、メイドとMadeをかけたわけじゃありませんよ?


「大丈夫だよ、いつものことだから」

「すずかちゃん……」

「なんだかんだで恭介さんは仕事のできる男だから」

「……いえ、やっぱり不安です。手伝わさせていただきます」

「あっ……」


 私も主に対して大概フランクだとは思いますけど、さすがに……『高原恭介』さんでしたっけ? 初対面ですのではっきりとは言えませんが、行き過ぎな感が否めません。あのノリだとシュガーポットの中身を全部塩に入れ替えるくらいしそうなので監視がてらお手伝いすることに決めました。


「待ってください」

「む? 君は確か……」

「ファリン、ファリン・綺堂・エーアリヒカイトです。先程はお互いに簡単な自己紹介だけでしたから改めまして、『高原恭介』さん」


 お茶を入れに出て行った高原さんに追いつき声をかける。……むぅ、いけませんね。口に出してから少し後悔です。どうも先程から私はこの人に対して攻撃的になっているようです。……なんででしょう?


「ではファリン、と……ああ、この名前は実に君に似合っている」

「……よくそんな気障ったらしい台詞吐けますね?」

「ふむ、これはアリサ嬢が持っていたゲーム中の台詞なのだが、失敗だったか?」

「そんな台詞、現実に吐くのはホストか詐欺師くらいなものでは? ……まあ私からすれば両方とも同じようなものですけど。しかしアリサちゃんにそんなゲームやる趣味あったなんて初耳です」

「辛辣な意見をありがとう。……だが、そのゲームはすずか嬢の姉君から借りたものだそうだ」

「すいませんでしたぁ!」


 謝るしかありません。いくら私の生みの親だとはいえ、純真な少女を冥府魔道に誘い込むような所業は許されるものでは有りませんから。


「安心しろ。俺が検閲してすぐさま返却させたから」

「……ありがとうございます」


 渋々といった私の口調に何か感じるものがあったのか、高原さんは苦笑いをしながら言う。


「それと、恭介でいい」

「……わかりました、恭介さん」

「ふむ、ではお湯を沸かすのでその間お茶受けでも見繕っていてくれるかな? いまだにすずか嬢の好みは把握していなくてな」

「わかりました」


 勝手知ったるなんとやら。何度かお手伝いさせていただいてことがありましたので私は難なく準備完了。恭介さんのほうも淀みない手つきでポットやカップを温めたりと準備しております。……むぅ、できる。


「こちら、準備終わりました」

「そうか、じゃあそこにワゴンがあるから載せてくれ」

「はい、わかりまし……あっ」


 しまった! こんなときに蹴躓くなんて……自分の未熟なバランサーを恨みます。
 しかし身構えた身体に衝撃は来ず、代わりにぽふりと受け止められるような感触。


「大丈夫か?」


 しばし硬直。次に現状確認。慌てて飛びのいて謝り倒す。


「っももももも申し訳ありません!」

「いやいや、気にしないでください。……にしても大丈夫ですか?」

「あ、だ、大丈夫です!」

「そうですか……しかし驚きました」

「え?」

「姓を聞いてノエルさんのような人かと思っていたんですが、まさか何もないところで転ぶような那美さんタイプでしたとは……」

「なんだか酷いこと言われた気がします!? ……って姉さんのこと知ってるんですか?」


 ノエル姉さん。完璧を絵に描いたような従者。MMMで殿堂入りを果たしたこともある私の誇るべき姉。恭介さんは私の質問に、しまったといった表情を浮かべたあと、何事もなかったかのように会話を再開した。


「ええ、そうです。昔世話になったことがありまして」

「昔、ですか?」

「ええ、彼女は命の恩人です」

「へぇ……あ、じゃあノエル姉さんもここに恭介さんがいること知ってるんですか?」

「いえ、知りませんよ」

「え……?」

「少し、顔を合わせづらい事情がありましてね。申し訳ないですが、できればこの話は内緒にしていただけるとありがたい」


 しばし黙考。……まぁいっか。どうやら悪い人でもないようだし。事情とやらも気になるけれど、無理に聞く必要もないでしょう。


「いえ、こちらこそ不躾なことを聞いてしまって……」

「いえいえ。さ、お湯も沸きました。行きましょう」

「あ、すいません」


 話しているうちに落としたお菓子の回収も済ませてくれたようです。……紳士です。さっきのアリサちゃんとの会話からは想像もつかないほどの紳士です。……ん? そういえば命の恩人ってことは……


「あの……」

「はい?」

「恭介さんは、もしかして姉さんの闘っている姿を見たことがあるんですか」

「…………」

「あっ、すいません別に言いたくないならいいんです!」

「ありますよ」

「え?」

「あります。ノエルさんとは共闘したことがあるんです」

「そうですか……いえ、私、姉さんが闘ってるところって見たことがなくって……」

「ほう……」

「じゃ、じゃあもしかして私たちのこと……」

「自動人形、というやつでしたか? 知ってますよ」

「あ……」


 そうか、この人は知ってるんだ。あの姉さんを。……じゃあ、気づいたのだろう。私がいかに不完全かということも。


「おかしい、ですよね」

「何がです?」

「私、同じ自動人形なのに、姉さんと違って転んだりドジしたりばっかりなんですよ……」 

「…………」

「早く、姉さんみたいになりたいんですけどねぇ……」

「別に、いいじゃありませんか」

「え?」

「これは友人から聞いた話なんですけど、ドイツのレストランではウェイトレスは皿を割っても怒られたりしないそうなんです」

「……なんでですか?」

「責められる謂れがないからです。皿を割るのは仕事をやってる証拠。むしろ厨房から皿を割る音が聞こえると常連さんから拍手が送られるそうですよ?」

「でも……それは、違います。私は主に仕える者なんです。失敗ばかりしてちゃあ駄目なんです」

「直そうとは、してるんでしょう?」

「当たり前です! でも、こればっかりは……性能ですから……」

「直そうと努力する限り、そこに進歩が無い筈はないんです。性能だって日々改善されてるんでしょう?」

「はい……」

「なら胸を張ってください。部外者が差し出がましいようですが、主や家族には言えないようなことでも、他人には言えるもんです。いつでもお話を聞きますよ?」

「恭介さん……」 

「さ、行きましょう。さすがにお茶も冷めてしまう」

「はいっ!」 


 別に私の何が変わったというわけでもない。ただ、どういうわけか、今日の出来事はふとしたことで思い出したりするような出来事になりそうだ。そんな、気がした。
 


 


<蛇足>
「そういえば……」
「はい?」
「君たちの腕って取り外し可能だったよな?」
「ええそうです。もっとも、パッと見てわからないように擬装してありますけど」
「ふむ……ちょっと見せてくれないか?」
「え?」
「いやなにノエルさんのロケットパンチを見た時から気になってたんだ。切れ目とか入ってたりするのかな、と」
「いや……そんな……恭介さんがそんな変態だったなんて……」
「変態!?」
「人の恥ずかしい場所を見せてくれと頼むなんて変態以外の何者でもありません!!」
「待てっ! そういう誤解を招くようなことを大声で言うな!」
「へえ、恭介さんってば変態さんなんだ」
「アアアア、アリサ嬢、まずは落ち着いてくれ。ファリンもきちんと説明してくれ!」
「恭介さんにわたしの恥ずかしい切れ目を見せてくれと言われました」
「何を言っているかファリン・綺堂・エーアリヒカイト――――!」



あとがきという名の(ry
 べ、別に拍手の人に刺激されたってわけじゃないんだからね! ホントだよっ!
 (言えない……! タイトルと蛇足を思いついたから書いたなんて言えない……!!)
posted by TRASH BOX at 23:11| Comment(15) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
って、おいぃぃぃっ!?(銀○風
新しいフラグ立てちゃったよ恭ちゃんっ!?

取り合えず、ニヤニヤしながら読んで蛇足で吹いた
いやもう、その表現はヤバイって…ファリン、怖い子っw
Posted by kagura at 2007年06月27日 23:24
 まさかここでファリン嬢が出るとは思いませんでした。ナイスです。
Posted by パッサッジョ at 2007年06月27日 23:32
あるのか!?この世界にもMMMが!w
Posted by よんよん at 2007年06月27日 23:38
アリサ嬢にすずか嬢・・・なんかやってはいけないゲームをしてるような気が(ぉ
そしてホストか詐欺師言われてるぞ>赤いの

確かに本シリーズは設定がかなり似てますね。
2刀使いの執事ってところは。んで、主人をからかう(ぉ
この調子で、3人目確保ですか?
まぁすずかとセット(酷)なんで、難なくゲットということで
Posted by MK2 at 2007年06月27日 23:41
ただ一言

ブラボー!!
Posted by ひより at 2007年06月27日 23:42
>そうか、じゃあそこにワゴンがあるから載せてくれ

「ワゴン」が「ウコン」に読めて、後で読み直して吹いたw

ソレはともかく、フラグ立ってますねえ、携帯の電波並に。
やっぱり恭也も英霊化したとしたら赤い人っぽくなるんだろうか?
Posted by ソル=ブラッサム at 2007年06月27日 23:52
ファリンもやっぱりいい子ですねぇ……。
那美のコンパチなんて思ってごめんなさいですよ(笑)

それにしても、忍の彼氏との類似に全く、これっぽっちも気づく様子の無いファリンは、やっぱりバランサーの問題だけではなくドジっ娘属性がついている気がします。
Posted by たのじ at 2007年06月28日 00:23
>これはアリサ嬢が持っていたゲーム中の台詞
それがPS2版かPC版かによってえらい認識が変わってくるんだが・・・・・・・・・・・・・・・・PC版だろうなぁ・・絶対w
まぁ、赤いのとこの恭也って次元を飛び越えてきたっていう共通点はありますけどねぇ。
特にSMP@師父があえて意識して書いたせいかもしれませんが蛇足の最後のフルネームを言ってとめようとするのはまさに赤い弓兵でしたね〜。

Posted by J at 2007年06月28日 00:40
ああ、那美と同じく転びそうになったところを
胸で支える妄想が!

まあ、直後にアリサに殴られるわけですが。
Posted by surt at 2007年06月28日 01:19
二刀使い、なんちゃって執事、紅茶淹れるのウマー。
・・・・・・被ってるな所々

原作で不遇なファリンにスポットを当てるとはGJとしか言いようが無い。
Posted by 00 at 2007年06月28日 01:20
忍…
なにか、なのはは既に洗脳済みな気がしてならないんですがw
Posted by ces at 2007年06月28日 07:19
ま、まさかファリンがでてくるとは!正直、ヨソーガイデシタ。
次はノエルかな?さくらかな?…ん、さくら?……ま、まさか!『狼の〜』の新展開!?(マテ
Posted by たわしX at 2007年06月28日 12:29
今回もゲルルンジュースの如く凝縮されたお話をありがとうございます!
Posted by ところてん at 2007年06月28日 23:33
恭也の宝具…
武器を選ばない御神流の流れを汲んで
古今東西の(デバイス含む)武器を投影する
「アンリミテッド・ウェポン・ワークス(UWW)」とか…
コメントをみて思いついてしまった妄想です、ごめんんさいm(_ _)m

何も無いところで転ぶ機能搭載とは…
きっと那美さん遺伝子が恭也と共に次元を超えてファリンに乗り移ったのだろうな〜(まて

蛇足に吹き出してしまいました。
ファリンが確信犯なのか、天然ボケなのかが気になるところですが…
恭也に合掌ww

次回も期待してま〜す
Posted by 葉月 at 2007年06月29日 08:22
 レス遅れてすいません。どうもシーサーたんのご機が斜めだったようで、コメントが全表示されなかったのです。

>kagura師父
 まだ、まだフラグじゃあないです。でもこれから先はわかりません

>パッサッジョさん
 まさか俺もファリンで書く日が来るとは思わんかった

>よんよんさん
 ? 全次元世界にあるに決まってるじゃないですか

>MK2さん
 マテ、赤いのは執事じゃないぞ。それとファリンは意外と貞操観念がかた……固くないかもしれん。そういえばおはようからおはようまで見守るんだしなぁ

>ひよりさん
 ダンケ!! グラッツェ!!

>ソル=ブラッサムさん
 待って待って、ウコンに載せるという一文にどうやって納得したのか激しく気になります。

>たのじさん
 本当は、スキャンしてどこかで見たことある体型だな? とか訝しがる描写もあったのですが、上手くつなげられなかったのでカットしたのです。続編書くようなことがあったら使うかも

>Jさん
 忍から借りたんならPC版に決まってるじゃないですかw
 あと蛇足はどちらかといえば、ダン・原川とヒオ・サンダーソンを意識して書きましたね。

>surtさん
 胸で、胸でですかっ! 残念ながら前の世界で恭介君はそういうことをしてからかわれた経験があるので、同じ轍を踏まないのですよ

>00さん
 そうだなぁ、ところどこと被ってるなぁ。関係ないけど不遇だからこそ輝く人って居ませんか? Tのつく子とか

>cesさん
 だってなのははハードゲーマーでしょ?

>たわしXさん
 実は狼でも出番があるっちゃある

>ところてんさん
 そ、そこまで濃厚だったかな……?

>葉月さん
 唯一つ言えることは……俺にはファリンがヒオに被ってしょうがない、ということです


 思いついてから発作的に書いた奴ですので何かミスがあるかもしれません。遠慮なく指摘してくれるとありがたいです。では再見
Posted by SMP@ at 2007年06月30日 19:40
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