2007年07月24日

ロマンティックな告白 by 霧城昂

 これは、DWとはなんら関係がありません。本家です。
 この話に登場する人物、団体、その他諸々、DWの原作となったものです。信じなさい。
 えーと、とにかく、これが正統派なのであしからず。

 結論から言おう――俺は浮かれていた。

 じりじりと照らす太陽がとても憎たらしい。俺は海鳴駅前にて、待ち合わせをしていた。待ち合わせの時間まで、まだ十分は時間がある。
 早く来すぎたな、と思った俺はのんびりと人並みを見て、時間を潰していた。
 道行く人たちには色々な人がいる。子供から、学生、社会人、老人と色々な世代の人たちが闊歩している。普段見ないものを見ると、人間はとても興味を引かれるようだ。その事が良くわかった。


「ママ? アイス買って帰ろうね?」


 丁度、俺の目の前を通っていった子供づれの親子だった。二人で買い物にでもでかけていたのか、母親の片手と子供の片手にビニール袋がぶら下がっていた。
 改めて思うが、今日はとても暑い。じっと立っているだけで、汗がにじみ出る程に暑い日だった。そう言った日に、アイスをねだるのは当然の行為だろう――そう考えた時、自分にはそのような事があったか、と思いを巡らす。

 子供の頃、俺は人に甘えるいう事を知らない子供だった。今考えてみたら、可愛くない子供だったと思う。友達と遊ぼうともせず、学校が終われば家にこもって親の背中ばかり見てきた。それでも、人との出会いのおかげで、少しは愛想と言うものを覚えたと思う。
 少し前まで、俺はこの不器用な性格を何とかしなくては、と考えていた。常々、妹からそのように言われ続けていたからだ。彼女の言葉には曖昧な態度で流していたが、俺自信言われる度に思い悩んでいたことだった。
 だが、今ではこのままでいいのかと思っている。このまま、変わらぬ態度で接し続けていくのはよい事なのだろうか、と。


「さっきの映画、面白かったよね」

「そーかなぁ、私には今ひとつだったかも」


 それは、高校生くらいのカップルだった。話の内容から察するに、二人で映画を見に行っていたのだろう。髪を少し長めに伸ばしている男の方は満足できる内容のようだった。こう言っては悪いが、その男からは随分だらしない印象を受ける。対して、女の方は男と違って清楚――と言っては失礼なのかもしれないが――な印象を受ける。彼女の方は満足できる内容ではなかったようだ。
 彼らの行く末を考えてみる。俺は一瞬で彼らの行く末が読めてしまった。理由は簡単だ。映画一つの趣味も合わないのだ。彼らの服装のセンスも全く違う。その結末は、いずれ別れる、という解で問題あるまい。
 その事を考えると思わず笑ってしまいそうになる。俺は、何とかそれを堪える。こんなところで笑ってしまっては、おかしな男だと思われるからだ。そんな癖が家族に知られてはたまったもんじゃない。もう家に帰れないかもしれない。

 時計を見る。待ち合わせの時間まで後一分を指していた。それに気付いた俺は、辺りを見渡した。既に彼女が来ているかもしれないからだ。
 もし居たとして、この人ごみの中で彼女を見つけることができるのか、と思ったが、そんな心配は無用だった。
 彼女の目は既にこちらを捉えていて、口元は少し釣りあがっていた。
 たまらず俺は頭に手を当てた。その様子から察するに、おそらく彼女は長い時間そこで俺を観察していたのだろう。理由はわからないが、彼女には数分時間とるだけの何かがあったのだ。

 俺は人通りを確かめ、人の少ないタイミングで彼女の方へ足を踏み出した。それでも人がいない訳ではない。俺は体がぶつからぬよう、体を斜めにして彼女との間を通り抜けた。


「おはよう」


 彼女は俺の言葉に笑顔で返してくれた。組んでいた腕を解き、その手を口元に近づける。同時に彼女の頭が少し前に傾き、その特徴的な銀色の髪の毛がほのかに揺れた。
 小気味のいい音を立てて、ゆらりと口元から煙が立ち上がる。それはまさに、彼女のステータスだった。俺自身はタバコはやらないし、世間では禁煙運動が盛んだが、俺は彼女にはタバコを辞めて貰いたくない。ずっと続けて欲しい。

 彼女――リスティに向けていた視線を少し上げる。ぎらぎらと光る太陽の光に自然と瞼が降りてしまう。頬を伝う汗も俺に訴えかけている。何時までもこんなところにいないで、どこか落ち着ける場所に行こう、と。


「Yes、ボクも同感だよ」


 彼女の意見も得られたことだ、早く涼しい場所に行こう。
 涼しく、落ち着ける場所となると必然的に限られてくる。飲食店、それもこの時間帯を考えると、喫茶店がベストな場所だ。
 海鳴は観光地だが、普段はあまり人が多いわけではなく、栄えていると言える街ではない。美味しい喫茶店の場所も数少ない。それに、彼女が満足できる喫茶店など、あの場所しかなかった。


「翠屋だろ? さっさと行こうじゃないか」


 彼女の考えていることを当てることができた俺は、彼女にばれぬよう、心の中で拳を握り締めた。
 彼女の考えていることはいまいち読みづらい。それは彼女の持つ雰囲気がそうさせているのか、彼女の仕事柄そうせざるを得ないのか、俺にはわからない。別にそれがいけないと思っている訳ではない。ただ、滅多にないことを達成できた自分が誇らしかっただけなのだ。

 駅前から離れるにつれ、人の数も段々とまばらになってくる。他の道はわからない。だが、人が多いはずの商店街への道を通っているのだ。他の道がそれ以上とはとても思えなかった。
 この間ニュースで見た、地方の商店街の特集について思い出した。その商店街では、若者を中心に皆都心に出てしまい、町に活気が無くなっていっているというものである。ニュースで見た商店街と比較したら、まだ海鳴の商店街は活気付いているようだ。俺はこの街が大好きだ。だから、できるだけこの商店街に協力しようと考えているのだ。

 隣のリスティを見ると、見事なあくびをしていた。それを見た俺は、少し目を丸くした。なんと言うか、少し意外だったからだ。
 俺の視線に気付いた彼女は、オーバーな仕草で肩を竦めた。


「昨日は真雪に付き合って、明け方まで飲んでたからね」


 途中で潰れず、最後まで真雪さんに付き合える彼女が少し羨ましくあった。俺も彼女と飲むことはあるが、最後まで付き合えたことは滅多にない。酒に強い体質だとは思っていないが、彼女のそれはもはやザルに例えるのが正しいと思う。

 やがて、俺たちは翠屋に到着した。もはや額だけでなく、服の下まで汗でべとべと――こんな日に黒い服を着ている俺が悪いのかもしれない――になっている。隣の彼女には気付かれたくはないが、無駄なことかもしれない。
 いい加減、この暑さに耐えられそうもない。何も考えず、ただ俺は目の前のドアを開けていた。
 ドアの隙間から感じられる涼しい風が俺の体を癒してくれる。生きてて良かったと思う瞬間だ。


「さっさと入ってくれよ。暑くてかなわない」


 もっともだった。

 中に入ると、知り合いの店員さんに接客を受けた。俺の隣を歩く彼女は、俺以上に店員さんと仲良く話していた。彼女の人柄の良さは純粋に羨ましいものがあった。俺が言うのもおかしい気がするが、事実は事実である。

 案内された席は窓際で、人気のありそうな四人がけの席だった。
 ランチタイムとずれているせいだろう、店内に客の姿はまばらだった。ランチタイムは修羅場である。俺も経験したことがあるから間違いない。
 丁度、真向かいに座った彼女は、アイスコーヒーを注文していた。俺は店員さんにアイス宇治茶を注文する。


「アイスコーヒーお二つですね、お待ちくださいませ」


 最近知ったことだが、アイス宇治茶を注文すると、アイスコーヒーに自動的に変換されるようになったそうだ。公式にそういう通達が出たのかはわからないが、少し寂しい話だった。
 早速、今日の目的を果たすことにする。


「言えた?」


 彼女はこくりと頷いた。
 何時の間にか口元から消えていたタバコの行方とは違い、彼女のその言葉は今日会った時から気付いていた事だった。
 彼女のキューピット役を買った事は失敗だったかもしれない。彼女が頬を染めて、そんな嬉しそうな顔で頷く姿を俺は余り見たくなかったのだ。そのことに気付いた俺は、胸が締め付けられるような気持ちになった。
 多少覚悟していた事である。大切な人物である彼女を人の手に取られるのは、少しどころかかなりの衝撃があっても可笑しくない話だ。


「流石に素面じゃ無理だったけどね」


 それ以上、余り聞きたくは無かった。
 アイスコーヒーを飲んだら帰ろう。自分の部屋にこもって、この先のことを考えよう。今の輝いている彼女を見るのはとても辛く、いてもたっても居られない気持ちになるのだ。こんなのは初めての経験だった。
 乾いた金属音に俺は自然と下がっていた視線をあげた。
 彼女はタバコを吸うわけでもないのに、ジッポを開けたり閉めたりしていた。その度に小気味のいい音が聞こえてくる。何故そんな事をしているのか、俺にはすぐ理解できなかった。だが、彼女のその優しい目で、わかった気がする。


「今までありがとう――耕介」


 それは、とても優しい言葉で、不覚にも胸が熱くなった。
 泣き笑いのような、そんな微妙な顔をしているだろう。
 恭也くんとは二人で、酒でも飲もう。飲めなくても付き合ってもらう。そうしないと、俺の気が治まらないからだ。

 リスティに送る言葉を慎重に選ぶ。そうしないと、滅多なことを口にしてしまいそうで、とても怖かったからだ。
 こういう話は冬の方が似合うのかもしれない。クリスマスやバレンタインの日にやるのがロマンティックな出来事になるのかもしれない。
 だが、リスティはこの暑い時期を選んだ。
 俺はそれでいいと思っている。彼女が納得した時なのだから、何も文句はない――それに、舞台など関係ない。
 その出来事は、本当にロマンティックな出来事だったのだから――
posted by TRASH BOX at 23:05| Comment(11) | GIFT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 本家お待ちしておりました。流石昴さん良いお話でした。この後の展開が楽しみで仕方ありません。
 次回の更新もお待ちしております。
Posted by パッサッジョ at 2007年07月24日 23:17
てっきり恭也の一人称なのかと・・
勘違いしただけかと思ったけど、これは騙されたのかな?耕介も若いころは不良だったんでしたね。
Posted by at 2007年07月25日 00:24
途中まで恭也とリスティかと思ってたら耕介とリスティ…?
で耕介がリスティと恭也のキューピッド役と…

あれ?間違った解釈してます?ちょっと自信ない
Posted by リゼル at 2007年07月25日 03:50
最近までは読専だったのですが、あまりにもつまらなかったので、書き込みさせていただきます。

まず、「信じなさい。」だの「正統派なのであしからず。」だの、慇懃無礼で不快です。

内容にしても、地の文がほとんどでわかりづらく、
状況を読み取るのにも一苦労しました。
正直、小説と言うよりも難しいだけで内容のない古文を読まされている気分でした。
自分のHPとかで自己満足のために細々と書く分にはいいのでしょうが、このように投稿し多くの人に読んでもらうのならば、もうちょっと読み手の立場にたって文章を構成することをお勧めします。

あと、私が言うことではないのでしょうが、正統派がどうこうというのなら、投稿作品が3次中心のここではなく、とらハSS投稿掲示板などに投稿されてはいかがでしょう?

ここでの作品の中で「2度と読みたくない」とはじめて思わされた作品でした。

追記
この感想を読み、管理人様および読者の方を不快にさせてしまった場合は申し訳ありません。

ただし、作者である霧城昂さんに対しては、投稿する以上、批判を受けることを覚悟していると認識し、謝罪しませんのであしからず
Posted by 加藤 at 2007年07月25日 18:11
 加藤さん、最初の注意書きを書いているのは霧城さんではなく、大岩さんだと思いますよ。
 そこを判別出来ないのに、慇懃無礼とか言う貴方の方が不快です。

 後、地の文ばかりで状況判断が出来ないとありましたが、普通、状況説明するのは地の文ですよ。そこは間違えないでください。
 というか、他に感想を送っている人は状況判別できているように感じますが、如何でしょうか?

 言うまでもありませんが、基本的に何処に投稿しようと作者の自由です。

 さて、加藤さんは霧城さんに謝罪はしないとありましたが、問題にしている注意文が大岩さんが書いたものだとすると、それは的外れな批判になりますね。
 まあ、どう判断するかは貴方の“自由”です。


 大岩さん、読者の方々騒いで申し訳ないです。
 どうしても見逃せませんでしたので、こうして書きこませて頂きました。
Posted by 静祓 at 2007年07月25日 22:17
 まず、説明を。
 このお話の主人公は耕介です。
 そして、意図的に恭也に思わせるように誘導しています。
 最後に耕介と気付いて驚いてくだされば幸いでございます。
 もう一度、頭から耕介と思って読んでくだされば、そういう風にも見えますので。
 多少、判りづらい面もあるかと思いますが、そう思われた方は申し訳ございませんでした。


>パッサッジョさん
 感想ありがとうございます。
 実のところ、この先の展開は考えていなかったり。
 ですので、短編としてお楽しみ頂けたら幸いです。
 書くとしたら、次も短編になると思いますので。


>てっきり恭也の一人称なのかと・・
 感想ありがとうございます。
 申し訳ございません。
 これはそういう文章でございます。
 不快に思われたかもしれませんが、こういう文章が好きなもので。


>リゼルさん
 感想ありがとうございます。
 その認識で間違いありませんよ。
 わかりづらいのは、私の文章の責任ですので、お気になさらず。


>加藤さん
 感想ありがとうございます。

 ご指摘の件に関して、ありがとうございました。
 大変、参考になりました。
 次、書くことがあれば、参考にさせていただきます。
 ありがとうございました。

 追記
 最初の三文に関しては私の方から申し上げる事はできません。
 どちらにしても、場が荒れるだけだと思いますので、ご了承ください。


>静祓さん
 ありがとうございます。
 どちらが本当かは先述したように、私の口から申し上げることはできません。
 読者様にとっては、一人一人が読み取った印象が全てだと思っております。
 ですので、励ましであれ、好評であれ、批評であれ、全てが私の参考になります。
 重ねて申し上げますが、ありがとうございました。
Posted by 霧城昂 at 2007年07月25日 23:11
読ませて頂きました。
自分も完全に騙されてしまいました(笑)
最初の部分に関しては、要するに原作の二次創作と言う意味では?
Posted by at 2007年07月26日 00:15
あえてここに投稿する理由と、ミスリードを誘う理由が理解できない。 ミスリードを誘う事によってストーリーに何の影響があるわけでもないし、続編があるとしてもこの話しはこの場で完結してるから後に影響しようがない。 ただややこしくて、把握しにくいだけになっています。 話の内容が悪くないだけに残念です。
Posted by N at 2007年07月26日 01:32
いろいろ評が分かれているようですが、私自身としては面白かったです。
投稿そのものは個人の自由だと思いますし、それに関する感想もまた個人の自由であると私は思います。
それでは、これからも頑張ってください。
Posted by 貴瀬 at 2007年07月26日 03:04
 えー、多大な混乱を生じさせて申し訳ない。
 問題になってる文章は俺が書いたものなので、霧島さんは全く関係ないです。罵るのはお門違い。むしろ、罵るなら俺。俺が書いたと書かなかった俺にどうぞ。
Posted by 大岩咲美 at 2007年07月26日 21:10
>Nさん
 感想ありがとうございます。
 あえて投稿した理由については、大岩さんに対するお中元みたいなものです。
 ミスリードを誘った理由については、端的に言うと私がそういう文章が好きだから、です。
 それを念頭に置いて、この文章を書いているので、抜いてしまったら、おそらくスカスカな文章になってしまいます。
 私、文章下手ですから。

>貴瀬さん
 感想ありがとうございます。
 楽しんでいただけたようで、何よりです。
 また、気が向きましたら書かせていただきますので、よろしくお願いいたします。

>大岩さん
 いえいえ、ありがとうございます。
 色々な意見を聞くことができて、本当に参考になりましたので。
 これからも、よろしくお願いいたします。
Posted by 霧城昂 at 2007年07月26日 21:43
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