2007年07月25日

相似形 by 紅石

 タイトルがなかったので、便宜上俺が付けました。

 ――――かくも人生はままならない。

 嘆息交じりに呻くユーノを、かつてその道を通り過ぎたクロノが痛ましげに見やる。というか彼もまた、ユーノの位置からおよそ135度左に視線を向けたくなかった。
「………もう一度だけ聞くよ。本気なんだね、なのは」
「言ったよね、フェイトちゃん? 私はいつだって、――――全力全開、なんだから!」
『Load,Cartridge』
「バルディッシュ!」
『Yes,Sir』
「いやいや待てっていったい何がどうしてこんな状況に放り込まれたのかまず誰か俺に説明うぉあああぁっ!?」
 どかーん、ばごーんといっそコミカルな爆音が轟く中を、すっ飛んでいくのは黒い人影。紅かったり緑だったりするナニカがエリアルな連撃を叩き込んでいるようだがそんなことは知らないのだ。むしろそのまま粉微塵に滅びてしまえばいいと思う。

 端的に言って、時空管理局は絶体絶命であった。












 声紋照合6割強。でもどうして?
 素朴といえば素朴な疑問こそが発端。
 珍しいことにその日手持ち無沙汰になった高町なのはは、なんとなく。そう、なんとなく、解析を掛けてしまったのだ。もう一人の兄、高町改め不破恭也を。世界は違えど同一人物であるならば、確かに育った環境に多少の差異はあろう。しかしなのはは確かにその時否と断じたのだ。彼の声は”兄”ではない、と。
 電子音が響き、そしてモニターに並んでいくネガティヴとアファマーティヴ。そして出た結論に、彼女は大きく息を呑んだ。
{検体と比較対象の遺伝、及び魔力パターン、生態パルス照合結果より、三親等以内の姻戚と判断セリ}
 そこからの操作は、ほとんど無意識だった。比較対象に自分の髪を用い、再度繰り返させる。当然のように返ってきた答えは同様の、あるいはそれ以上に血縁から離れているというもので。
「………それって、つまり」
 ――――つまり、彼は。不破恭也は。
 ”お兄ちゃん”じゃ、ないって、こと、なの?
 身の毛もよだつような不安感に襲われて、なのははすぐさま席を立った。とっさに確認した時計の単身は3の少し下を指している。この時間なら確かトレーニングルームだろう。無性に顔が見たい、会って話がしたい。できることなら撫でてもらって……アレ?
 徐々にずれていく思考を立て直す間もなく飛び込んだそこに、望んだ黒があった。
「どうした、異次元妹。息せき切って」
 いつも通り飄々とした台詞をこぼし、噛み千切ったボトルの蓋を吐き捨てる恭也。始末書の類なら片付けたが、緊急招集か、いやそれとも………首を傾げてミネラルウォーターを流し込むという器用な真似をしている。
「あ………あの」
「なんだ?」
「あの、あの、ね?」
「ああ」
 と、ここでなのはは固まった。それはそうだろう、いったい何をしに来たのだか、自分でも分かっていなかったのだ。胸を焦がすような形のない欲求は、彼の汗の匂いを嗅ぐと同時にどこかへ行ってしまった。ああ、わたし、何をしに来たんだっけ?
 考えて考えて顔を真っ赤にして、でもその実思考回路はショート寸前というかもはや破損断線。出てきた言葉は、
「―――――――――――――――好きです」



 ちなみに組み手の相手をしていたのはその親友、フェイト=テスタロッサ=ハラウオン(18)。番茶も出花というお年頃である。仄かに想いを寄せる男との二人きりの密閉空間(というには少々火薬の香りが強すぎるが)。誰にも邪魔されないはずの場所への闖入者に眉をひそめていた。休憩の合間に交わす何気ない会話こそが数少ない楽しみだったのに、と憤懣やるかたない。が、それが親友とあっては声を大にもできずぼんやりと成り行きを眺めていたのである。
 で、先の発言が飛び出した。兄と妹、その関係を知るフェイトは一瞬硬直し、そして再起動。ちなみに恭也は石になったままだ。
「な、何言ってるの、なのは!?」
「へ? ………は、ふわあわわわわ!?」  
 我に返ったが既に時遅し。覆水は盆に返らない。 
「な、なんでフェイトちゃんがいるのー!?」
「そ、それは……っ」
 やましいところなど何もないはずなのだが、唐突な詰問についどもってしまうフェイト。対外的にはともかく内心私情が入っているところは、根が正直な彼女には引っかかったようだ。しかしそれはかえって導火線への火付けと成り得る。
「ままままま、まさか!?」
「へ、変な憶測はしないで。ただその……お付き合いをさせて頂いていた、だけだから」
 模擬戦闘の。
「お付き合いーーーーーー!?」
 無論言外に置いた補助詞など、脳の湯だったなのはに察するなど不可能だった。ぎゅおんと首を半回転させて、恭也にそれはもうおどろおどろしい光を宿した視線をぶつける。
「お兄ちゃん、どういうこと!?」
「むしろお前がどういうことだ!?」
「そんなお付き合いだなんてはしたない今のところは健全で清い交際を心掛けている訳でありましてええとそう嫌というわけではなくてゆくゆくは夜明けのコーヒーも辞さない覚悟といいますかまずは家族に紹介するところから始めて赤い屋根に暖炉がある家でアルフはつれていけないかもでもやっぱり」
 風が嵐を呼ぶようにして、混乱は更なる混乱を呼ぶ。瞳を古典的な渦巻き模様にしてわけの分からないことを口走り始めた親友をほっぽりだし、なのはは恭也の襟首を引っつかんでがくがくと前後に揺さぶる。
「どういうことなのお兄ちゃんってああでもお兄ちゃんじゃないのーーーーーーー!?」
「おっ、おちっ、落ち着―――うぼぁ」
「つまりつがうという事は神聖かつ人の一生を左右する節目としてあるもので軽々しく出来るものではないのだからウェディングドレスは最低でも3着は必要でお色直しには白だけという選択肢の狭窄はでも白はあなた色に染められるという意味を持ちその響きはとても」
 なんだかとても混沌だった。









「―――――つまり、兄妹じゃなかった、ってこと?」
「うん………」
 うな垂れるなのはに、ようやく落ち着きを取り戻したフェイトは疑問符を隠せない。それと先ほどの発言につながりなんて……いや、そうでもないか。
「あの、ね? フェイトちゃん」
「え?」
 沈思に沈んでいたフェイトに、なのははむしろ不思議そうに問いを返す。
「私に、あの人以外に好きになれそうな人、いるかな?」
「……………………………………」
 絶句したのは驚いたからではなく、肯定以外に出ない自分自身にだった。白い悪魔の二つ名を背負う彼女に比肩する男というと精々が義兄のクロノであるが、彼は既に既婚。というか手綱を握れる器ではない。握らせるようななのはでもないし、と微妙に惨い評価を下す義理の妹。
 発覚、突撃、自爆、撤退の起承転結を済ませたのがおおよそ半刻前の話だ。定時が近かったのをいいことに、脳天から煙を吹いて気絶した恭也を置き去りそそくさと二人逃げ出したのはいいものの、辿り着いたのは結局フェイトの執務室。この件はどう考えても外部に漏らしてはまずかろう。盗聴などの対策が万全なここならば、というわけだ。
「で、でも、恋は異なもの味なものって言うし」
「じゃあフェイトちゃんだってお兄ちゃんじゃなくたっていいじゃない」
「うっ」
「私は、あの人がいいよ」
 直球。なぜそこまで、と思えるほどの真っ直ぐな思いの丈だった。気圧されるフェイトだが、しかしここで折れてしまうほど柔ではない。数え切れぬほどの修羅場を潜り抜けた自分を、そんじょそこらの小娘と一緒にしてもらっては困るのだ。問題点があるとすれば、同様の戦場をライバルもまた潜り抜けてきていることだが。
「………どうして?」
 それでも尋ねる。
「どうして、あの人なの?」
「分からない」
 即答だった。
 だけどその表情に揺れがない。むしろいっそ誇らしげでさえある。伏し目がちなのは何かを思い出しているからなのか、それはきっとなのはだけのもので、フェイトの知らないもので。
 胸が、痛む。
「わからないけど、でも」
「…………もう、いいよ」
 痛む、から。
 だから、そう。
「わかった」
 一つしかない、分けることのできないモノを望む二人だから。
「………負けないから」
「うん」
 頷き、背を向け歩き出すなのはの瞳に蔭りはなく、見送るフェイトにも悲壮感はない。理由は一つ、相手も自分も、恋する乙女なのだから。それ以上の何を持って共感となるだろう。嗚呼、誰より理解しあえた友よ、だけどここだけは、譲れない。あなただってそうでしょう―――――?



 そうしてこれが、第194次まで続く恋の鞘当て、通称「第六課スタンピード伝説」の始まりとなったのだった。














「昨日は負けたけど、今夜はうちで晩御飯なんだからー!」
「今日のレストランは2ヶ月も前から予約済みなの! 邪魔しないで!」
「あかんなぁ、慎みってやつを知らんと。……ほれ、大丈夫か恭也さん。リインが探しとったで?」
「う、ぐ……面目ない」
「たまにはウチ寄ってき。みんなにも顔見せたってぇな」
「「あーーーーーーーっ!!」」


 もちろん参加者は、雪達磨式に増えていくのであるが。






****************

 連作になったらいいなぁ。
 TrashBoxの繁栄を願って。By紅石
posted by TRASH BOX at 23:29| Comment(27) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
さすがツーカーな仲の雷神と魔王。よく話の意図が分かったもんだW
何故だかスクライド臭がするのもなのはクオリティ。
第194次に至るまでの総参加人数X名によってどれだけ周囲が破壊された事か?
Posted by くろがね at 2007年07月25日 23:43
雪達磨式かぁ
まぁこの6課ならなるよな〜
慎みって言ってるはやてが一番慎みを持っていない件についてどう突っ込めばいいのかなっと5分ほど考えて出した結論…はやてだしいいか

なのはの何気ない解析が何故告白に至り、フェイトの暴走は混沌に走ったのだろうか、そして恭也の明日は真っ暗だw
Posted by 無童 at 2007年07月25日 23:47
第194次って。また六課の悪名が増えていくんだろうなぁ。
Posted by qwe at 2007年07月25日 23:50
執筆お疲れ様です。

また、面白そうなものを…(苦笑
きっと、なんだかんだ良いつつも裏で賭けが行われてるんですよね?♪

とりあえず、大穴リインUに一口!
大穴に一口は賭けとかないとw

勝負が終る時…
それはきっと恭也が色々と諦めた時ですね(涙
主に、複数人での共有化とか…?

次回作も楽しみにしています。
Posted by 神楽朱雨 at 2007年07月26日 00:14
なんでしょうか、この伝説・・・
まったく終わりが見えないような気がしますw
Posted by みみみ at 2007年07月26日 00:20
やべ、面白ェ。

なのはの暴走に思い切り噴いた(笑)
あんな壮絶な自爆有り得ねぇ!!
ものすごく、GJです!

……第194次って事は……一年以内に決着付いたのか(激何
Posted by 叉夜(魔) at 2007年07月26日 00:37
ディモ〜ルト!!ファ〜ンタスティ〜ック!!!
実に素晴しい作品でした。
恭×なのハーレムは(なのはメインの恭也ハーレム)
好いなー、此処(トラ・ボ)は恭×なの天国ですね。
読み切りじゃなく連載作品に成る事を節に祈って。
Posted by hou at 2007年07月26日 00:39
初コメ失礼します

まず作品を書き上げた事を素直に尊敬します
自分は何度も挑戦しては途中で挫折しているので…

あと作内後半で
「昨日は負けたけど、今夜はうちで晩御飯なんだからー!」
とありますが、なのはとフェイトって同室…
どちらにしろ混沌ですか?

超大穴でカリムに一口…無理か
Posted by 冬姫 at 2007年07月26日 00:46
あぁ!なんか瞳が渦巻きになってるフェイトが凄く可愛いw
実におもしろくて、思わず初めてのコメント書いちゃいました。
連載作品になることを私も楽しみにしてますーw

そういや何気に恭也と士郎は血繋がってるかはっきりしてないので、
なのはと兄妹でない可能性ってあるんですよねぇ。
Posted by 蒼司 at 2007年07月26日 01:06
 公開2時間でもうレスが・・・トラッシュボックスは愛されてますね。そしてこのような初心者の、初めてのssに皆さんコメントいただき、本当にありがとうございます。
 なお、この話はDW準拠(のつもり)です。資料をそろえてもう少し続けていければと思っていますが、遅筆をどうか責めないでやってくださいまし。。。

 ちなみに当方は恭也×フェイ派で(ry
Posted by 紅石 at 2007年07月26日 01:15
 公開2時間でもうレスが・・・トラッシュボックスは愛されてますね。そしてこのような初心者の、初めてのssに皆さんコメントいただき、本当にありがとうございます。
 なお、この話はDW準拠(のつもり)です。資料をそろえてもう少し続けていければと思っていますが、遅筆をどうか責めないでやってくださいまし。。。

 ちなみに当方は恭也×フェイ派で(ry
Posted by 紅石  at 2007年07月26日 01:29
みさせていただきました。しかし第194次っていったいどれほどの人数が恭也の毒牙にかかったのやら・・・すごく気になります。   あっあと自分はヴィータに一口です
Posted by ゴルシア at 2007年07月26日 01:49
まさに混沌。
どうやら続くみたいですが、まあ恭也は常に絶体絶命なんでしょうね。
ちなみに私は不破に一口
Posted by 貴瀬 at 2007年07月26日 03:22
テンパリまくりななのはとフェイトがどえらい可愛いですな〜。
>嗚呼、誰より理解しあえた友よ、だけどここだけは、譲れない。あなただってそうでしょう―――――?
私もここでスクライド臭を感じましたw

これから参加者が雪達磨式に増えていくようですが接点の少ないアリサ嬢やすずか嬢がどのようなまき返しを魅せてくれるかも楽しみの一つです(マテ

大穴はほとんど出尽くして気がするんで△辺りでティア嬢をw
Posted by J at 2007年07月26日 04:55
管理局が一夫多妻を命令してハーレムになりそうな気がします。拙者はギンガ嬢に一口
Posted by にゃあ at 2007年07月26日 06:11
面白い話でした。
>第194次まで続く恋の鞘当て、通称「第六課スタンピード伝説」
きっと番外があって実際と数が違ったり、
194で数えることをやめたのかもしれませんね。
Posted by suimin at 2007年07月26日 09:10
そっか…これが6課解散の理由か。
もっとも解散したらしたで、管理局全体に広がる可能性もあるのですが。

壁はでかいがどうするよ、二人。
なのは:突き進む
フェイト:切り開く
Posted by surt at 2007年07月26日 09:19
>「―――――――――――――――好きです」
いきなり告白ですか、フェイトも目の前で想い人に向かって
妹であり親友でもあるが人物が告白するとは驚いたでしょう。
こうなったら恭也が六課の女性陣(キャロを除く)コンプリートで
いったらどうかな
Posted by ケンコウダイスキ at 2007年07月26日 09:55
おもしろかったです

二百近い衝突に巻き込まれて生きてる恭也もある意味で規格外ですよねぇ.....


私はシグナムに一口賭けたいと思います
Posted by ひより at 2007年07月26日 09:55
何故だろう?
この作品を読んでほのぼのしてる私が居る(ぉ
うむぅ、ギャグだからニヤニヤしないといけないはずなんだが(マテ

これは次回、漁夫の利なはやて嬢vsなのは・フェイト嬢か?w

私は大穴でえーっと
天然白シャマルさんで('-^*)/
Posted by kagura at 2007年07月26日 10:10
きっと仕事より全力全開なんでしょうね。

ここはヴィータ嬢ではなくヴィータさんで
Posted by かなかな at 2007年07月26日 12:31
勝者は痺れを切らして実体化
もしくはなにげなくストックしいた時空転移系魔法を発動した不破ことリインTに一票
Posted by S!To at 2007年07月26日 13:41
 こんにちはー
 最近、このサイトに来るようになって恭也メインの話も良いなぁ、とか思うようになってきました。
 つまりは、エースオブエースを撃墜した漢・・・ 不破恭也?

 あと、ワタクシはフェイト+アルハザードから奇跡の生還と復活を果たしたプレシア&アリシアの3人同時攻略に1口で<超大穴?
Posted by 福茶 at 2007年07月26日 17:51
このコメントの掛け率は正直なにかのプレッシャーですかと問いたいっ!
なんか予想されてるっぽいので調子に乗って続きを書いてます。もう少しお時間くださいー。
Posted by at 2007年07月26日 19:46
三親等って叔父さんじゃね? とか思ったり。結婚は四親等からだったような。どうだったっけ?
あとエリアルでコンボ数稼がれた恭也哀れ。
Posted by サンゲツ at 2007年07月26日 20:31
>三親等って叔父さん

たぶん「高町恭也」と「不破恭也」を照合したら「三親等以内の姻戚」って結果で、「高町なのは」と「不破恭也」を照合したら「それ(三親等)以上に血縁から離れている」って結果が出たんだと思われ。


私は本編にちょっとだけ出たリスティさんに一口入れておきますね?
Posted by at 2007年07月26日 20:55
2コメ目で申し訳ない。

裏で賭け事って…
ここでやってどうする!?

まさか、ここから白覆面まで誕生しないだろうな…(汗

まあ、賭け事ネタふったの私ですけど(苦笑

続き、頑張って下さい。
Posted by 神楽朱雨 at 2007年07月27日 01:13
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。