2007年07月27日

相似形2 by 紅石

 二人の実力は拮抗している。



 魔力は言うに及ばず、容貌、人格、地位、評価。長短あれど総合力にして、甲乙付けがたき才媛である。だがしかし、恋愛、こと男性への(無論不破恭也というただ一人へに対しての)セックスアピールという局所部分において、高町なのははフェイト=テスタロッサ=ハラウオンに一歩譲る、というのが周囲の感想である。このことについてはなのは自身も不承不承ながら肯定していることだ。理由は多々あるが、まず敵戦力を分析してみれば早かろう。対する六課の黒いヴォーパルバニー、万年三等陸士の不破恭也。魔道士評価は最低ランクでありながら、己が技術を以て上位に比肩しうる類まれな存在。彼を疎む者も多かれど、その戦闘力は侮ることを許さない。さらに加えて恐るべきはその鈍感朴念仁。寄せられた好意は数あれど、その全てを見事にスルーし続けた男である。ただでさえ実の兄として、別の世界での関係を記憶する彼がなのはを恋愛対象で見ることができるはずもなく、やはりその面でも不利は明らかだ。
「…………はぁ」
 外れた枷は溜め息よりもなお重く、彼女の願いを縛り付ける。立ち止まらないのがモットーではあるが、現状勝ち目が見えてこないのはどうしたものか。勇敢と無謀は別物なのだ。そして前回の特攻は明らかに無為無策に過ぎた。が、いまさら無かったことにはできない。
「どうしたものかなぁ………」
 暴走告白より2ヶ月。動かない事態に良案も浮かばぬまま、今日もなのはは鬱々と書類にペンを走らせている。












 ―――――しかしてライバルは待ってはくれない。



 格上というのも語弊があるが、少なくとも”身体を使う”という一点において、彼に勝るものはいない。よってこの時間、彼女はある意味で地位や身分から開放される。普段どおりの自分で彼に向き合える、これは甘えで、そして抗いがたい魅力のある余暇の潰し方。他人の目にどう映るかはさておいて。
「ぃヤァアァあぁァァ「ほいっと」ぁぅっ!?」
 魔法強化最低限度の近接限定状況。いいように転がされつつ、年頃の少女としてどうかとは思うけれど、フェイトは汗にまみれつつもそれを楽しんでいた。
「も、もう一本!」
「熱血だな」
「ふ、ぅ………せあっ!」
 小太刀二刀の間合いが、どれほど遠いことか。そして自身の間合いはそれよりも遠いはずで、決してその距離を掻い潜られてはならないのに。しかしながら、恭也の持ち味は速度である。奥の手は神速という常人には、いや人外にさえも視認困難な歩法でもって詰めてくるため、―――本日13度目の転倒。どちらにしても、それを使われる以前にあっさりとカウンターをもらってしまうのだが。この半年の彼女の目標はとりあえず、このルールのもとで恭也の両足を動かすことからなのだった。
 今回もまた繰り返す数合でバルディッシュを弾き飛ばされ、返す左の一刀で容赦なく足を払われ空中半回転。マットに熱烈なキスを交わして沈黙したフェイトに、恭也はここまでだ、と模擬刀を降ろした。
「動きに遊びが多すぎる。得物の重量に任せての破壊こそが戦斧のウリなのはわかるが、斬撃がはずれた場合どうしても硬直してしまうな。対人戦闘でそこまでの火力は必要ないわけだし、やはり考え直すべきだぞ。刃渡り10cmもあれば人を殺すには充分すぎるんだからな」
「う、く………」
「もっともその形状が嬢のデバイスなのは分かっている。つまり嬢のスタイルは万能型、魔法を交えての戦闘こそが真骨頂なわけだろう? だから、この状況設定が悪すぎるということで、何が言いたいのかというとだ。あー……まだ、続けるのか?」
 斧である以前に魔道具なのだから、その機能を半ば封じた形での戦闘だ。いくら格上とはいえ実力の半分も発揮できないなら、自分の庭で自由にさせられている彼が負ける道理もない。勝利にこだわる場面ではないとはいえ、剣士としての矜持が少々不満を上げていた。
「………ヨワイモノイジメみたい、だからですか」
「……平たく言えばな」
 目標が半年変わらないということは、すなわち一度としてそれがかなっていないということで。かといって手を抜けばフェイトの氷雪のような怒りに身を晒す羽目になる。下手をすれば一生もののトラウマになりかねない。よって、毎度のように嘆息が漏れるのだ。
「役割分担というものだよ、嬢。諦めないことは悪いことではないが、気持ちを切り替えることも大切なことだ」
 以上だ、と肩を竦め、恭也は壁際に置いていたボトルを放る。転がされたまま、フェイトはそれを右手で受け止めた。ここまでの流れもいつものことなのだ。
 ただいつもと違うのは、この後続くはずだったたわいもない世間話の内容だけ。
 はあ、と先程とはわずかに質の違う溜め息をついた恭也に、少し苦笑して尋ねる。前日のアレがまだ尾を引いていたらしい。
「悩んでますね?」
「そりゃ、な……」
「迷惑でしたか?」
「……驚いたのは、間違いないが」
「ふふ」
 答えにくいことを聞いてくれるなと半眼で呻く年上の男に、フェイトはくすくすと笑みをこぼした。ますます深い渋面になる彼に漏れる声も大きくなっていく。
 幸せだな、と不意に思うのはこんな時だ。楽しくて、嬉しくて。こうしてささやかな日常を、ずっと守っていけたら。
「ああ、でも」
 だから、だから。始めよう。考え抜いて、決心して。親友とは違うけれど、それでも辿り着いたのは同じ答え。想いのままに動ける彼女が羨ましくて、だけどこれこそ私の姿で。
 リスクは覚悟した。失うものも大きい。でも、求めるものはとても大きいから、やるべきことはやらなければならない。
 だからここで。ここで、私の心の形を示そう。



「恭也さん」
 フェイトは朴念仁ににっこりと微笑み、何故か彼は怯えたように一歩後退する。
「な、なんだ。これ以上は正直キャリーオーバーで」





「――――――私も、好きですから」





 覚悟してくださいね、と続けた年下の娘に、男はやはり今回も石になったのだった。

















 短くてすいませーん。1シーンのみ。2日3日じゃこんなもんです(´・ω・`)
 前回の蛇足で、フェイトさんの告白ってこんな形かなーと妄想。
 なのはは直情径行、フェイトは冷静沈思なイメージ、だけど並んで歩いていく親友はいいなぁとか。
posted by TRASH BOX at 23:12| Comment(9) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
恭也二度目の石化www
この後何度石化するんだろうw
6課メンバー分?
あっでもサブキャラの皆様も居ますし…
恭也…とりあえず強く生きろw
Posted by 無童 at 2007年07月27日 23:26
雷神様きたー?!
次は夜天の王か?

あとは、さすがにセックスアピールではフェイト>なのはか…
もっとも、なのはは「桃子おねえさん」似なのでわずかな差なんでしょうが。
Posted by surt at 2007年07月27日 23:32
フェイトさん宣戦布告ですか。
まぁ、あれですな。
数々のフラグブレイカーを全力全壊で行いまくったつけが恭也にロリコン以外の道をなくしてしまったのですな。
Posted by a,cline at 2007年07月27日 23:33
告白フェイト編! という感じでしょうか。
参戦人数が増えるたびに恭也が石化、そのうちレベルが上がって風化したりして…
次は3人目出現でしょうか?
楽しみにしていますw
Posted by 冬姫 at 2007年07月27日 23:42
おぅ、積極的なフェイト嬢が(//▽//)
こーいうのも良いなぁ
悩むなのはと道を決めたフェイト嬢
一歩リードで、このリードを守り通せるかな?

出来ればこのままキャラが増えず、二人メインで進んでほしい所です(・ω・)/
Posted by kagura at 2007年07月27日 23:45
フェイト参戦! フラグブレイカーも流石にここまで直球だとかわしきれませんよね。次の参加者は誰かな?
改行が少なすぎて読みにくいと感じるのは俺だけでしょうか。
Posted by at 2007年07月27日 23:49

先ずは二人目…
この先何人がスナイピングを直撃させるのでしょうか?

さすがのフラグエスケイパーもエース級のスナイピングはスルーできない様子…

次は、夜天の王編ですかね?

恭也…
「フラグに溺れて溺死しろ!」

次回も楽しみにしております。
Posted by 神楽朱雨 at 2007年07月28日 00:07
続きktkr!!
短くても続編を上げて貰えるだけで満足です。

次は八神家方面ですか?

しかし、フェイトが18才なら時系列的には
機動六課設立直前位ですかね?
第194次迄続いて通称が第六課スタンピード伝説
ですから、最初期のうちに機動六課が設立して
194次の大半は六課で発生したからこその通称ですか?
Posted by hou at 2007年07月28日 00:40
開き直ったフェイトさん素敵です

恭也君押されっぱなしですね
Posted by ひより at 2007年07月28日 17:03
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