2007年08月01日

高町兄妹シリーズ新たな刃前編1 by ひより

1.望んだ力

第二屋外訓練場
整地されたグラウンド


ガァンッ!!ガキンッ!!

絶え間なく響く金属音

砂塵を舞い上げ、二人の剣士が獲物をぶつけあう

幾度目かの鍔競りの後、互いに弾かれたように距離を取る

「ハアッ......まったく厄介な魔法を覚えおって...」
そうぼやくのは紅白の騎士甲冑を身にまとい、片刃の長剣を構える勇ましき女騎士―――シグナム


「そう言うな、これでやっと互角と言った所だろう」
対するは二刀を構えるシグナムの物によく似た黒い騎士甲冑を着た男―――高町恭也


「そう簡単に変わるものかと思っていたのだが...本当に強くなったのだな」

「これでも無い頭と乏しい才能を使って考えたんだ、変わらねば困る...」

互いに武器を構え直す

「ふふっ....」
突然シグナムが笑いをこぼす
「....?模擬戦とはいえずいぶん余裕そうじゃないか」
「別にそういう訳じゃない、ただ昔を思い出した」
「昔....?」
怪訝な顔を返す俺にシグナムは続けた

「お前と私が、初めて戦った時の事だ」
「―――あの時か」
思い起こすのは闇の書事件の頃
「そういえばシチュエーションが似ているな」
「だろう?」
俺が魔導士と戦えるようにと望んだ力....「不破」の試運転で初めてシグナムと剣を合わせた

「あの時はずいぶんと驚かされたものだ.....魔力F、ろくに魔法を使えない筈の男に、本気を出す羽目になった」
「バカいえ、あの時はあれで必死だったんだ、それに―――本気は出してても全力では無かった、違うか?」
はやて嬢に気取られる訳にはいかなかったからな、殺す気でくるとか言ってはいたが...手加減された筈だ

「さてどうだろうな?」
「まぁ些細な事だ」

カートリッジの撃発音と共に、シグナムが炎に包まれる
「――まだ、手の内を全部見せた訳じゃないんだろう?」
「あぁ、種も仕掛けも充分だ」

右手の「不破」、そして左手の新しい相棒である黒刃のデバイス「不抜」、両方のカートリッジを撃ちつけた
全身に魔力が回る

シグナムはレヴァンティンを大上段に掲げた
「もっと魅せてくれ恭也....お前の新しい力を」

二刀を鞘に納める
「そちらこそ....試運転なんだからな、全部試すまで倒れてくれるなよ?」
その挑発に、シグナムは獰猛な笑みで応えた


互いに魔力を限界まで練り上げ
「紫電.....」
「纏魔.....」
そして黒と紫は再び激突する
「一閃ッ!!!!」「薙旋ッ!!!!」

轟音が響き渡った





時は数時間前に遡る

恭也の新しいデバイスが完成したという突然の知らせを受け、六課の皆は開発部に集まっていた


「いつの間に新しいデバイスなんか注文しとったんや...」
はやては恭也をジト目を向けながらぼやいた

なにしろ責任者である自分に、完成するまで一言も話を聞かされていなかったからだ
「なに、ちょっと特殊なオーダーをしたんでな、ちゃんと注文通りの物ができるまでは秘密にしとこうと思ってたんだ」
「....驚かそうとか思ってたんとちゃうん?」
「それも無きにしも非ず、といったところだ」
ジト目がきつくなった



「しかし新しいデバイスとは...「不破」に不満でもあったのか?」
シグナムにそんな事を聞かれる
「いや、不満という訳ではないが、ちょっとした考えがあってな。それに「不破」の代わりを作った訳じゃない」
『当然だ、恭也が私を棄てるというなら恭也を殺して私も死ぬ』
などと物騒な事言われ顔をしかめる

「お前はもう俺の相棒だ、棄てたりはせん」
『まぁ、私ほど恭也に尽くす女もいないだろうからな』
「.....確かに色々と助かっているが、なんか違わないか?それ」
「はいはい、イチャつくなら余所でやってなー」
「イチャついてないっ!」
『そう照れなくてもいいだろう』

なにやら漫才じみてきた空気をなのはが強引に切り替えた

「それで、お兄ちゃんはどんなデバイスを作ったの?」
「あ、私も気になります」
フェイトが相づちを打つ

殆どの人も気になっているのか、ウンウンと頷いてる

「俺から説明するよりも専門家にしてもらったほうがいいだろう―――ちょうど来たようだしな」

と言って開発部の奥に繋がる扉を見る
全員がそれを追うと
「お待たせしましたー、皆さん集まってますか?」
金属製のケースを抱えた作業服姿のシャーリーがやってきた




2.不破の対

少しテンションの高いシャーリーが気密性の高そうな金属ケースをテーブルに置く顔を見れば寝不足だったのだろう目のしたに軽いクマが出来ていた

「こちらが今回開発された恭也さんの専用デバイスです」

ケースをあけると、そこに入っていたのは不破とはまた違った機械的なフォルムをした一本の小太刀
「非人格型アームドデバイス、開発コード「マインゴーシュ」です」
「まいんごーしゅ?」
「なのはさん達の世界にある短剣の一種が名前の由来となっています、意味は「左手用の短剣」「守りの為の短剣」で、今回は「サポートの為の剣型デバイス」という意味合いで使ってます」
なるほどそういう意味だったのか

「サポートって...補助魔法特化って事かいな?」
はやての質問にシャーリーは続ける

「それは後ほど説明しますが、先に仕様の解説をしちゃいますねー」
と、シャーリーは近くのキーボードを叩き、大型のモニターに「マインゴーシュ」の設計図とデータを表示させる

「刀身は恭也さんの小太刀「八景」の物を流用しました。材質は鋼、十分な強度を持たせる為に、希少金属のクロンダイトを高圧力下で充填化合してあります」
データを見ると強度が単純な鋼に比べて数倍以上に上がっている
「さらに戦艦の装甲などに使われる対魔法皮膜を三層に渡って施しました、大抵の射撃魔法や一部の砲撃魔法ははじけます、同様の処理を「不破」にも施してあります」

皆はいつの間に、とでも言いたげな目で腰に差してある不破を見る
「本体には極小タイプのデバイスコアに、[CVK792-A]のベルカ式カートリッジシステムを搭載、カートリッジのマガジンはストレートタイプ、柄の内部を通すように接続してあります、その為柄が不破に比べて若干太くなっているので注意してください。」
ふむ、それは慣れればなんとかなるか

「装弾数は八発、同時撃発は最大三発まで使用可能です、使用魔法形式は古代ベルカ式、ミッドチルダ式の2種類に対応しています」
「.....?なんで2種類も?」



普通一つのデバイスに使える魔法形式は一つが基本

そもそも、複数にする意味がない、一人の魔導士が扱える魔法形式は一種だけ
近代ベルカ式と古代ベルカ式でさえ、魔術式に大きな違いがあるのだ
ただ唯一の例外が、[夜天の王]八神はやて

ミッド式と古代ベルカ式、二種類の魔法形式を自在に使いこなすことのできる、管理局唯一の存在

その為[魔導騎士]という称号で呼ばれることもある
だがそれができるのはロストロギアであるユニゾンデバイス「夜天の書」の使い手だからだ


「それについてはこれから種明かししますよ、実はこのマインゴーシュはですねぇ....」
勿体ぶるように言葉をきるとこう言った


「単体ではデバイスとしては使えないんです、OSが入ってませんから。厳密に言えばデバイスですらありません」
一瞬の静寂
そして
『ええええぇぇ〜〜〜〜??』
大合唱

「ふむ、そうだったのか」
「恭也さん驚かないんですか!?ていうかなんでそんな落ち着いてるんですかっ!?」
フェイト嬢のツッコミが入った
なかなかの切れ味だ

「いや、希望を伝えただけだからな。具体的な見積もりは不破とシャーリーに任せていた」
デバイスの知識なんか持っていないからな
だからシャーリーが来ないと説明なんか出来なかったわけだが

「しかしそれでは、作った意味が無いのではないか?」


シャーリーは悪戯の成功が嬉しいのかクスクス笑っている
「では種明かしといきましょうか」
そういってモニターに不破とマインゴーシュのデータを並べる

「このマインゴーシュは、たった2つのプログラムしか入ってないんです、一つはさっき言ったように、ミッドチルダ式と古代ベルカ式の発動式。発動式だけで構築式、制御式は入っていませんし、カートリッジシステムの魔力制御プログラムすらはいってません」

「それはまたずいぶんとシンプルな仕組みだな」
「実はデバ爺さんにだいぶ影響されまして...。これでも彼から見れば、まだまだ無駄があるはずです、その代わりにカートリッジの弾数を大幅に増やす事ができました」

デバイス翁の技術は神業とも言って良い
一見簡単な造りである不破も、専門家が見れば芸術の塊のような物なんだとか
その翁ですら小太刀型にカートリッジシステムを仕込むのに苦労した



「でもそれじゃ魔法使えないんじゃ....」
恭也に魔法の才能は殆ど無い、起動から発動までデバイスの補助がなければ使うことすらできない

「そこで不破さんの出番です!」
「どういう事?」
シャーリーはコホンと咳払い
「マインゴーシュに搭載されている2つ目のプログラム、それはスバルさんのマッハキャリバーにも搭載されているシンクロプログラムです」
へ?と、突然自分の名前がでたことで困惑するスバル嬢


「このシンクロプログラムは、その名の通り2つ以上のデバイスを同調させるためのもの。これによって、「マインゴーシュ」を不破さんがコントロールする事と同時にカートリッジを使用した魔力を共有することができるんです。」

なるほどそういうカラクリなのか
「マインゴーシュ」に備わってないプログラムは不破の物を共用する訳だな


「ですがこれは優れた管理能力を持つ、不破さんがあって初めて可能な技術なんです、裏技とも言えるものです」
「裏技....?」
どういう事だ?
「このマインゴーシュは不破さんと恭也さんの弱点を補う為に開発されました」
「弱点?」



「不破さん....というより初代リィンフォースさん、彼女は元々夜天の魔導書の記憶媒体でもある管制人格でした」

不破が「その名で呼ぶな」と抗議をあげるがシャーリーはスルー

「その為、「不破」には闇の書事件で蒐集されたあらゆる魔法と、それを容易く行使するだけの魔法技術、、さらに並のデバイスより遥かに高い術式処理能力が備わっているんです。その結果、「不破」はロストロギアに認定されてもおかしくない程の超高性能デバイスになったわけです」

「....」
かなり今更なことに気づき、全員唖然

「不破、お前凄い奴だったんだな」
『ふふふ、やっと私という存在のありがたみが判ったか。もっと褒めていいぞ?』
まぁ俺が持つには勿体無なさすぎるシロモノだということはよくわかった

「そこでマインゴーシュの話に戻るのですが....この「マインゴーシュ」は不破さんの性能をより生かし、欠点を補う為の物です」

「不破の....」
「欠点?」
今聞いた話だと完全無欠のようにも聞こえたんだが

「まず、使い手の恭也さんに魔力が極端に少ない為に、保存されている殆どの魔法が使えません」

「....むう」
其処を突かれると弱い

「加えて、「不破」の対応する魔法形式が近代ベルカ式の為、不破さんに記録されている古代ベルカ式、ミッドチルダ式の魔法が使用不可能でした」
なるほど、そこで....

「そこでマインゴーシュの出番です、これと同調することで、少ない魔力を複数のカートリッジで大幅に補う事ができ、欠けていた二種の魔法形式も使用可能になります。
起動から構築までは不破さんの仕事になりますが、マインゴーシュがあれば、恭也さんは3つの魔法体系全てを使う事ができます」
あくまで恭也さんの扱える範囲での事ですが、とシャーリーは締めくくった


なるほど、つまり俺の手に余る魔法は使えない訳か、砲撃魔法が使えれば便利だったんだが....


シャーリーはケースを持ってこちらに歩いてくる
「どうぞ恭也さん、あなたの新しい相棒ですよ」
「...ありがたく頂戴する」「いえいえ、御期待に添うことができたでしょうか?」
「期待以上だ」

マインゴーシュを掴み取る
重さは八景と殆ど変わらない
これならすぐに使いこなせそうだ


「あぁそうだ!」
シャーリーが何かを思い出したのか手をパンと叩く

「その子に名前を付けてあげてください」
「名前?マインゴーシュじゃないのか?」
「それは開発する上で必要だったコードネームで、正式な名前じゃないんです」
なるほど....さてどんな名前にすべきか

『恭也、おかしな名前を付けたら承知しないぞ、私の半身なのだからな』

むう

「しかしな、俺にはネーミングセンスとやらが全く無いらしいのだ」

「そういえば不破の名前を付ける時も、最初に八景マークUとか言ってましたね....」

よけいな事思い出すな緑っ

「お兄ちゃん....流石にそれはないと思うな」
「センス以前の問題とちゃうか?」

好き勝手言いおって

だが...そうだな

「不破の対として作ったんだしな.....「不抜」にしよう」

「ふばつ?」
「どういう意味なんだ?」

「不抜というのは揺るがぬ心、堅い意志という意味だ.....護りの剣、御神不破を支える、もう一つの力だ」


『ふむ、恭也にしては中々良い名前だ、気に入ったぞ』
「お褒めにあずかり光栄の極み....まぁ呼ぶ事はあまり無さそうだが」

非人格だから呼んでも答えんしな、不破が制御するわけだし

「シャーリー、感謝するぞ、これでまた一歩、前に進む事が出来そうだ」

その言葉にシャーリーは照れ笑いを浮かべながら
「こちらこそ、久々に満足のいく仕事が出来て楽しかったですよー。」
と眠たげな目をこすった

―――こうして俺は新しい力を手に入れた
posted by TRASH BOX at 23:19| Comment(2) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんな時間に更新ラッシュとは驚いた・・・。
しかし恭也がどんどん強くなっていきますね・・・。
Fランク魔道士にして管理局随一の不可解中年剣士・・・。
恐るべしはリンフォース・アインとデバイスマイスターか・・・。
Posted by HR at 2007年08月01日 23:44
シャーリーのキャラが凄い便利です
多少の無茶は「シャーリーだから」で許されてしまいます
アインは扱いが難しいですね...
やろうと思えば何でも出来てしまうので制限を設けました
Posted by ひより at 2007年08月02日 15:54
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