2007年08月06日

八神恭也の光輝 by kagura

 コンコン、とドアを叩かれる音で眼が覚めた。
 ぅ―――いま、何時?
 昨日は別に、普通に寝たはずなんだが…頭が、重い。
 はて?
 頭を軽く振って伸び――

「ふぁ――」

 大きな欠伸をすると、目がシパシパする。
 うぅ、完全な睡眠不足――昨日暑かったからか?
 視線を外に向けると、もう日は完全に昇っていて…暑い夏の日差しが街を照らしている。
 むぅ…何でこんな時間まで寝てるんだ?
 昨日――何かしたっけ?
 思い出してみるが…うん、普通に日付が変わる頃に寝たはずだ。
 うん、記憶はそこで途切れている。

「酒も飲んでないは――」

コンコン

 おぅ

「そうだったな――っと」

 ベッドから降り、玄関に向かう。
 そういや来客?中だったな、と。
 ―――ここまで人の気配に気付かないとは…どうしたんだか。はぁ……

「いらっしゃ――」

「おはよう、恭也さん?」

 む――
 ドアの向こうには、見慣れた少女と女性――真っ白な二人が、そこに居た
 白のサマードレス……まぁ、うん。良く似合ってる。
 褒めたりしないけど。

「はやて嬢、こんな早くにどうした?」

 自分より半分以上小さい嬢を見下ろし――

「おはようございます、恭也さん」

「シャマルさんまで」

 その背後に控えていた金髪の緑――は陽光を背負っていて顔が見えない。
 まぁ、おそらくいつも通りニコニコ笑っているんだろう。
 声もいつも通りだし――

「早く、て……もうすぐ昼やで?」

 なに?

「さっき来た時も反応なかったけど…寝てた?」

「……二度目か?」

「はい、この炎天下の中」

 むぅ……
 前言撤回、微妙に怒ってるっぽい。

「それはすまなかったな。今日は調子が悪くてな」

「え?大丈夫なん?」

「ああ、体が重くてな」

「風邪?……ってキャラやないか」

「そうですね――ウイルスが逃げるでしょうし」

 もう良いよ、もう…少しくらい心配してくれてもさ……

「今日はどうしたんだ?」

「そう拗ねんといてー」

「拗ねてないわ」

 まったく

「で、今日は――」

「何も言ってへんよ…いきなり来たし」

「そ、そうか…」

 緊急で俺が居なかったらどうする気だったんだ?
 まぁ、居たから良いけど…それに、その辺りはシャマルさんが調べてるか。
 何だかんだで、結構後先考える性格だし。

「何か用事がありましたか?」

「いや――どうせ、調べただろう?」

「さて、何のことでしょうか?」

 ふん……

「ま、上がると良い。立ち話もなんだしな」

 そう言って、玄関に隙間を作り

「おはよう、二人とも」

「二人とも?」

 ―――――はぁ
 ニッコリと笑って、いつもより少し近い位置で見上げる目と見詰める目。
 夏の日差しに照らされた二つの笑顔。
 可愛い女の子と、美しい女性の笑顔。
 はぁ……面倒な事で。

「おはよう、はやて嬢、シャマルさん」

「うん、おはよう恭也さん」

「はい、おはようございます恭也さん」

 そう言って笑う二人を見ながら思う――

「ゴハンは…まだですよね?」

「ああ」

「ん、簡単なのすぐ作ったるよ」

「それはありがたい」

 ――今日の休日は、一日潰れそうだなぁ







 さして広くない部屋の真ん中にポツンと一つ置いてあるテーブルを三人で囲み
遅めの朝食と言うか、早めの昼食と言うか…まぁ、二人が作ってくれたご飯を食べる。
 ちなみに、米まで炊いてくれてる辺りに感動を覚える。
 ああ、今度何かしてやろう…むしろ今日になりそうだが。
 そう言えば――

「何しに来たんだ?」

 メシを作りに…って訳じゃないだろ?
 まぁ、それだけって線もあるけど……この二人の場合。
 ―――というか、何をニヤニヤしてる?

「相変わらず、良く食べますね……」

「育ち盛りだからな」

 お代わりを頼む、と茶碗を差し出すと嬉々として注いでくれるのは緑。
 本当、なんでこんな二人が俺に飯を作りに来てくれるのか…何時も不思議に思う。
 だってそうだろう?
 片方は小学生、もう片方は俺には勿体無いほどの美人だ。
 オカズの玉子焼きを一欠けら口に入れる。
 程好く甘くて美味い。俺には作れない味だ、本当に。
 と言うか、一人暮らしの男の朝食がこんな上等で良いんだろうか?
 ……舌が肥えそうだな、色んな意味で。

「どうぞ」

「ああ、すまない…二人は食べないのか?」

 お代わりしておいて言うのも、アレだけど

「ん、朝は食べてきたし。恭也さんも軽めにな?後で一緒にお昼食べよ?」

「む、判った」

 なら、コレで終わりにしておこう。
 そう決めたなら、味わって食べとかないとな。

「しっかし、暑いんやね、ミッドの朝も」

「知ってるだろ…ま、地球よりは涼しいがな」

 お、茶柱立ってる。
 ズズゥ―――ふぅ、茶の淹れ方も上達したもんだ。

「御粗末さまでした」

「いや、本当に美味かったよ嬢」

「私は?」

「それで、今日はどうした、嬢?」

「あー…まぁ、いやな?その前に……」

 チラリ、と笑顔が少し怖いシャマルさんのほうを向く。
 むぅ、からかいすぎたか。
 最近なんだかなぁ……

「……作ったのは焼き魚かな?」

「う――当たりです」

「ふ……火が通ってなかったな」

「ぅ……」

「それに――」

「わー、ストップストップ」

 む、ここから良い所だったのに……

「中々微妙だったぞ、シャマルさん」

「うぅ……」

 何を泣いてるんですか、貴女は。

「ほ、ほら泣いたらあかんって…この前は微妙やったけど、今日は中々微妙やで?」

「本当に“微妙な”変化だな」

「恭也さんっ!!」

 スマンスマン――肩を竦めて

「二人してどうした?何か用か?」

「ん、そんなとこ――やけど、恭也さんは今日暇?」

 どう答えろと?
 ここまで来といて……

「はぁ……暇ではあるな、もう少しで昼だが」

「でしたら、一緒にお出掛けしませんか?」

「……なんか、最近また立ち直り早くなりましたね」

「誰の所為ですか、誰の」

 自分の所為だろ、自分の

「ほーら、喧嘩はアカンよ?」

「了解。相変わらず元気そうだな、二人とも」

「元気だけが取り柄やし?」

 そんな事はないだろう。
 楽しそうに笑う少女と、それを見て嬉しそうに笑う女。
 不思議なもんだ、関わったのはほんの少しだけ。
 それももう2年も昔――なのにこうも“繋がって”いて、それが“当たり前”になっている。

「嬢は夏みたいだな」

「夏?」

 ああ――夏だ。
 そう称された少女は不思議そうに首を傾げて――

「……何か暑苦しい女?」

「違うわい。まぁ、強く否定もせんが」

「なんでっ!?」

「あ、判りますよ、ソレ」

 だろう?
 ヴォルケンリッターなら、多分すぐに判るだろうな。
 そう言うことだ――はやて嬢。

「シャマル、どう言うこと?」

「内緒です」

「い、イジワルや!?二人してっ」

 そうか?そんな事ないよな?
 シャマルさんに視線を向けると、同じ事を考えていたのだろう、視線が絡む。
 クツクツ、クスクスと二人で笑い――

「まぁ、正確には暑いじゃないんですけどね?」

「しゃ、シャマルっ!恭也さん!!」

「どれ、どっか遊びに行くか?」

「こんな時だけ優しい言葉っ!?なんでやの、ちょ、恭也さん!?」

「はっはっは、着替えるから出てろ」

「さ、行きましょうかはやてちゃん?」

「うわーん、二人とも鬼や、悪魔やっ」

 はぁ、元気だな……シャマルさんに羽交い絞めにされて部屋から出て行く嬢を眺める。
 本当にどうしたんだか…いきなり来るし。まぁ、今までもそうだったけどさ。
 寝巻き代わりのシャツを脱ぎ捨て、床に放る。
 服は何があったかなーっと。

「今度はどんなヘンテコな“お願い”なんだか」

 思い出すのは“父兄参観”と“休日のお誘い”
 ふむ、今日は“悩み事”とみた。どうかな?
 …どーせまた、しょーもない事で悩んでるんだろうな……
 はぁ……いい加減気付けば良いのに

「ま、いつも通りで良いか」

 着飾るのも馬鹿らしいし。
 黒のシャツにジーンズ、財布と携帯を持って準備完了、と
 それじゃ、行くとしますか

「どうしたもんかな――」

 首をコキコキ鳴らして洗面所へ。
 鏡を見ながらヒゲ剃って、顔洗って―――ふむ

「ま、普通か」

 顔色も異常無し。
 食欲もあったし……夏バテか?
 むぅ…初めてかかったかもしれん。
 アレか?文字通り住む世界が変わったからか?
 注意しとこ……今日、今度来る時に嬢にウナギを頼むかな…







 うわ、暑っ
 部屋から一歩出た時点でアウトだった。
 というか、コンクリ熱吸い過ぎ……ムワッときたムワッっと

「で、何処に行きたいんだ?」

「涼しい外」

 また難題な。
 涼しい外?夏にそんな場所あるかな……もう昼過ぎたし、近場でか…
 それなりの年季を感じさせるアパートを出、日差しの強い外へ。
 相変わらず暑いのに人が多いことで――彼氏彼女の連中は尊敬するぞ、本当。

「とりあえず、昼を済ませるか。少し遠くだが、良い店がある」

「へぇ……」

「珍しいですね、恭也さんがそんなお店を押さえてるなんて」

「……言いたい事は判る。実際、先日拉致られて知ったからな――」

 くそぅ、しかも食費はこっち持ちだし…。

「やっぱり」

「まぁ、恭也さんですし…そんな期待しても駄目ですよ?」

「昼抜きが良いか?」

「「いえいえ、滅相もございません」」

「なら行くぞ――といっても、歩いて結構掛かるけどな」

 確か…ここからだと20分くらいか?嬢が居るし。
 俺、嬢、シャマルさんの順に並んで歩き始める。
 流石に休日の本道から外れた道、走る車は皆無か――ある意味、休日の散歩に丁度良いな。

「恭也さんはいつも真っ黒やけど、暑ない?」

「む――慣れればそうもないが…やはり暑そうに見えるか?」

「うん」

 ふむ……

「まぁ、目立たない服装が好きだからな」

「そうなん?身長高いから、良い服で着飾ればそれなりやと思うけど?」

 ――嬢、何気にキッツイ一言だからな、それ。
 …何を笑っている、緑――あ、シャマルさん。
 今日は白だから、緑じゃないか。

「いえいえ、何でも?」

「その笑顔が何もない笑顔か……ったく」

 髪を掻いて、空を見上げる。
 遠く遠い澄んだ空、白い雲に、燦々と輝く太陽。
 夏―――たぶん

「暑くないか、嬢?」

「ん、大丈夫やよ」

 そうか――と、その頭に手を乗せる。
 熱い……

「本当に大丈夫か?凄く熱いぞ…」

「ん?そう―――うわ、熱っ!?」

 気付いてなかったのか?
 シャマルさん、何か帽子みたいなのは…無いよな?
 視線を向けると、首を横に振られる。
 まぁ、小さなバッグしか持ってないしな、二人とも。

「そうだな――俺の食休みも兼ねて、公園で涼んでいくか?」

「え、近くに公園あるの?」

「ああ。良く朝の鍛錬場所に使ってる」

「また――シグナムと同じですね、恭也さん……」

「む……」

 そんな事は無いだろう?
 べつに、俺は戦闘狂(バトルマニア)じゃないんだがな……

「そんな事言ったら、シグナムに斬られますよ?」

「む――口に出してないはずだが…」

「丸分かりです…まったく。ねぇ、はやてちゃん?」

「せやね――恭也さん、本当最近顔に出るようになりましたなぁ、色々と」

 むぅ……

「ほら、さっさと公園行くぞ。こっちだ」

「照れとるな」「照れてますね」

 照れてなんかないっての……まったく。

「置いてくぞー」

「もう、ちょぅ待ってや」

「やなこった」

「ふふっ、イジワルですね」

 黙らっしゃい。

「あ、すぐ近く?」

 ああ、もう見えるだろ?

「大丈夫か?」

「心配性やなぁ、恭也さんは」

 そうか?
 まぁ、嬢はまだ子供だしな。
 その小さな手を取り、公園に向かう――他意はない。本当に。
 ただ、何となくこの子が“子供”だと思ったから、だから手を握っただけ。
 そう――“迷子”にならないように。

「どないしたん?珍しいね、恭也さん」

「ま、嬢がはしゃぎすぎて迷子にならないように…と思ってな」

「ふぅん――ま、ええか」

 そうだな。
 公園の敷地内に入って、手頃な――あった

「あそこの木陰のベンチに座って待ってろ。飲み物を買ってくる」

 すぐ近くに自販機があったはずだ、確か。
 普段使わないから、記憶はおぼろげだが……

「ゴメンナサイ、恭也さん」

「気にするほどの事でも……シャマルさんも嬢と一緒に居てくれ」

「はい、そうさせてもらいます」

 ああ、そうしてくれ。
 冷たくて糖分があるのが良いかな…と考えながら数分後、自販機発見。
 古き良き赤い箱に小銭を投入。
 ふむ―――あまり地球と変わらないか?お茶とか売ってるし。
 オレンジジュースを二本と、なんか緑茶っぽいのを一本買う。
 うわ、高っ……もう二度と買うまい。うん。

「おーい、無事か?」

「いや、そんな重病人やないんやし……」

「ふむ――今度から心配はあまりしないようにしよう」

「あ、あ、心配は一杯して欲しいなー」

 どっちやねん。

「ほら、オレンジで良かったか?一応お茶もあるが……」

「ジュースでお願いします。シャマルは?」

「はい、私もジュースで」

 そうか。
 並んで座る二人に手渡し、俺は立ったまま缶を開ける。
 プシュ、と乾いた音と共に嗅ぎなれた匂い…って

「た、炭酸なのか?」

「どないしたん、恭也さん?」

「い、いや……」

 見た目に騙されたか…ちぃ。
 やるな、製造会社。

「うへ……」

「――あんま、美味くない?」

「微妙。果てしなく微妙」

 なんだコレ?
 お茶特有の香りも無ければ、炭酸特有のあのシャワーって感じの喉越しも弱い。
 総じて中途半端…つか、普通。
 むぅ……微妙すぎる。

「ジュース、飲む?」

「そっちは嬢が飲め。こっちは責任をもって俺が処理しよう」

「処理って…もう」

 そう言うな、シャマルさん。
 この微妙さは最早作業だ、作業。
 しかし――

「そうやって並んで座ってると、」

「うん?」

「なんですか?」

 いや、なに――

「親子みたいだな、と。髪の色は全然違うがな」

 白のサマードレスに小さなバッグの母親と同じ白のサマードレスの少女。
 ああ、確かに――そう考えると、そう納得できる。
 優しい母に活発な娘――ふむ

「良く似合ってるな」

「そ、そっかな?」

「ああ――本当に……」

 いや。首を軽く横に振る。
 “似合ってる”“本当に”じゃ無いだろ、俺?
 馬鹿らしい――“こいつ等は”そう言う関係じゃないか……今更何を。

「母親と娘だな、その絵は」

「そか――」

「ああ」

 そして、それを心から望む少女は本当に嬉しそうに微笑んで――

「嬉しいわ、恭也さん。な、シャマル?」

「え――本当、に」

 なら良かった。
 柄にも無く恥ずかしい事を言った甲斐があった。

「わ……向日葵、こっちの世界にもあるんや――」

「ああ、名前は違うがな」

「そうなん?」

 ああ――まぁ、忘れたが。
 花なんて、俺の柄じゃない。
 ベンチの木陰を作っていた木を挟んだ反対側に、ソレは見事な向日葵畑。
 数十ではきかない――百本くらいありそうな、大きな畑。
 一つ一つが大輪で、皆揃って空を見ている――

「わぁ――綺麗ですね」

「見るのは初めてですか?」

 言葉を無くしたかのように、ベンチで呆けていたシャマルさんに声を掛ける。

「いえ、去年も見ましたが――こんなに沢山咲いているところは初めてです」

 そうか――うん、そんな嬉しい顔されたら、こっちまで嬉しくなれそうだな。
 本当に、そう思えるような幸せな笑み。ソレが、二つ。

「凄い、沢山――」

 って

「嬢の休憩なのに、そう動き回られたら意味無いんだが?」

「ええや、ちょっとくらい。頭でっかちやなぁ」

 まったく

「シャマルさんははしゃがなくて?」

「そ、そう言う年齢と言うか、見た目でも……」

 まぁ、20そこそこの美女が向日葵と戯れるというのも、見てみたいものではあるが
俺としてはどうでも良いことか……

「今日はどんな用事で?」

「二人で遊びに――それだけでは?」

 ふむ……

「本当に?」

「はい、本当に――です」

 そうか

「暇人だな」

「学生と、ある意味フリーターですから」

 そうだな――

「?なにか、おかしな事言いましたか?」

 いや――首を横に振る。
 なるほど、俺は笑っていたのか――確かに、表情に感情が出ているな。
 朝の鍛錬での、精神修行の密度を上げるか。
 流石に、こうも感情が顔に出ては、仕事にならん。
 前はそう無かったんだがなぁ…ふむ、八神家に関わりだしてからか。
 良い事なんだか、悪い事なんだか――ま、今は良いか

「暑いな」

「ですね――木陰に座っては?」

 そうさせてもらうか。
 ベンチの端と端、若干真ん中よりに二人で座る。

「――――――」

「――――――」

 何となく、御互い無言。
 向日葵を見上げる嬢を二人で眺めながら、ゆっくりと吹く風に髪を梳かせる。
 先ほど俺は、二人を母と娘――と称した。
 うん、ソレは間違ってないし、二人も喜んでくれた。
 だが――今はどう見えるんだろうか? 第三者からは。
 ふとそんな下らない事を考えて、苦笑する。
 馬鹿らしい。そんなの知ったことか――どうせ、関係無い。

「本当、嬢は元気だな――」

 向日葵の海ではしゃぐちっさい女の子。
 まったく、夏だってのに元気な事で――日射病には気を付けろよ?

「はい――夏のような人ですから」

 ――ああ。ソレは朝、俺が言ったことか……
 夏のような――と
 暑いんじゃない、と

「あんな元気だから、皆心配するってのに」

「でも、元気だからあの子は“八神はやて”なんですよ」

 そうだな――本当、そうだ
 その物言いに妙に納得してしまうのは…まぁ、俺もそう思ってるから。
 と言うか、そう言う風にはやて嬢を捉えてるからだろう。
 我ながら、なんともはや……

「恭也さんっ、シャマルっ」

 元気に、手を振ってくる――歳相応の女の子。
 それが普通なのに、何故“久し振りに見た”と思ったのか――
 純白の少女が、黄金の大輪華を背に、両手を大きく振っている。
 最高の笑顔で、幸せを振りまきながら……はぁ

「暑いんだから、日射病に気を付けろよ?」

「はーい」

 返事軽いなぁ…はぁ

「心配性ですね?」

「―――もしかしたら、そうなのかもな?」

「――――――」

 いや、そこで反応しないのは止めようよ?
 泣きそうなんだけど……

「何か悪い物でも食べました?」

「どう言う意味だ、コンチクショウ」

 失礼なヤツだな……
 後、本気で驚いた顔も止めような?

「もう、どないしたん、二人とも?」

「ん?――ああ、シャマルさんに苛められてた」

「ちょっと!?」

 事実だろ……

「逆と違うん?」

「――まぁ、五十歩百歩?」

「もう、喧嘩はあかんよ?」

 注意します。

「ふぅ――あっついねぇ」

「この炎天下に動き回るからだ」

「キビシイなぁ……」

 まったく。
 ベンチの真ん中、俺とシャマルさんの間に挟まるように座る嬢。
 丁度等間隔で座る形。赤いベンチに、白の二人と黒の俺。
 ――どんな配色だ。

「ええなぁ、こういうの」

「「???」」

 唐突に言われたそれに、二人で首を傾げてしまう。
 何が良いんだろうか?

「判らへん?」

「ああ――予想もつかん」

「そこまで難しくあらへんって」

 そうか?
 まぁ

「嬉しそうだな?」

「そりゃもう、な?」

「わ、私ですか?いえ、私もはやてちゃんが何で嬉しいのか…チョット」

「ふぅん?」

 うわ、嬉しそうな顔だな…

「記憶にもほとんど無いけどな――懐かしいなぁ、って」

 きおく? 懐かしい……?
 ―――ああ

「欲張りなヤツ――」

 その頭を、グシグシと乱暴に撫でる。
 本当に“自分”を出すのを躊躇う大馬鹿者。
 本当、下らない事を――

「そんな事あらへんやろ…な?」

「はい――はやてちゃんは欲張りです」

「あ、あれ?」

 ふっふっふ……

「まったく、お馬鹿な主を持つと大変だな」

「はい――もう、本当に変なところで誰かに似て……」

「誰か?」

「はい。頑固で一途で、もう困るんですよ?」

「ちょ、ちょ――シャマルっ!!」

 なんですか?と普通に聞き返すシャマルさんと、それに食って掛かる嬢。
 本当仲良いな、二人。

「もうええわ――はぁ」

「溜息を吐くと幸せが逃げるぞ?」

「ええよ、別に」

 いいのか?

「今、めちゃめちゃ幸せやから、少し不幸になってもまだ幸せなくらいや」

 そ、そうか……隣を見ると、シャマルさんも嬉しそうに、困ったように苦笑している。
 多分俺も同じような顔だろう…ったく

「嬉しいんよ、本当に」

「そか―――良かったな?」

「うん」

「良かったわね、はやてちゃん」

 そして、さりげなく――そして限りなく弱く、服の袖が捕まれる。
 小さな手、その手が、服の裾を掴む。

「もう少しだけ、こうしててええ?」

 ふむ……

「疲れたみたいだな、少し座って休むか?」

「うんっ」

 公園にもボツボツ人が増え始める。
 ―――どう言う風に、第三者からはとられらるんだろうか?
 黒髪、茶髪、金髪の3人。
 は――

「今日はこのまま、のんびりしたいですね」

「ええなぁ、ソレ」

「だな――良い具合に影だし、景色も良い」

 のんびりと談笑しながら時間の確認。
 現在13時を少し回った所、と。

「風もあるし――うん、涼しい外や」

 ああ

「依頼達成だな」

「せやね――ありがとな、恭也さん」

 気にするな――この手をその頭に乗せ

「メシの礼だ。また何か使いたくなったら、メシを作りに来ると良いさ」

「おおー、ええんですか?」

「ま、程々に…な?」

 ゆったりとした夏の昼下がり

「私も何か頼んで良いですか?」

「もう少し料理が上手になったら…後、ほんの少しだけ」

「はいっ、頑張ります」

 頑張るんだ!?
 まったく……

「良い日だな」

「せやねー」

「ですね――」

 3人並んで、空を見上げる。
 澄み切った青の世界。 
 ただただ綺麗で、優しい景色
 その景色を上を挟んで座った俺達は見続ける――
 この、第三者が見たら“誤解”するような形で――見続ける
 向日葵の花のような夏の少女。
 正に、その通り――眩しいくらいに元気な少女。

「良い昼下がりだ――」

 知っているか、嬢?
 俺はこの花だけは知っているぞ?
 向日葵――花言葉は『光輝』
 まさに“元気一杯に光り輝く”嬢に相応しい、夏の花。

「寝ちゃったら、起こしてくださいね?」

「あ、ウチもー」

 ふ―――

「了解した」

 さぁ、もう少しだけ、この家族の“真似事”を続けてみるか―――
posted by TRASH BOX at 23:35| Comment(13) | 三次創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
家族、良いモノです。
なにげなく過ごしていると解らないし、時に邪魔くさく思ってしまうものですが……

偽りであるからこそ適度な距離を保った家族でいられるのかもしれない。

ヤマアラシのジレンマを何処かで感じました。

みんなで、おっかな吃驚、楽しい家族でいてほしいですね。
Posted by ウェルディ at 2007年08月06日 23:57
やはりkagura氏が書く家族ものは読んでて癒されますね。
次回も楽しみにしています。
Posted by 空 at 2007年08月07日 00:02
お疲れ様です。
久しぶりの八神恭也シリーズ(?)ですね。

夏ということで向日葵という流れの作品でしょうか?
向日葵の花言葉『光輝』
これにかけようとすると恭×フェイでは違和感がでてしまうと思いますので、八神恭也で書かれたのは英断だと思います。
まあ、そう言った理由があるのかは分かりませんが…(汗

今回の作品もほのぼのとしていてとても良かったです。最初の恭也の体調不良(?)が気になりますが、これは自作があるぞという布石でしょうか?

次回作も期待しております。
Posted by 神楽朱雨 at 2007年08月07日 00:10
家族の真似事、でもそこには確かに家族としての安らぎがある。
何気無い一幕、だけど大切なこと。
ゆったりと楽しませていただきました。
Posted by 冬姫 at 2007年08月07日 00:16
氏のまったりとした文体というのは,一つの味だと思います.
恭也xフェイトの甘々とした話や,八神家の家族もののほのぼのとした話には,非常にマッチしています.

今回の話は,家族としての話と見れば,悪くない出来だと感じました.
前半の三人のやりとりは,現実は家族ごっこでしかない筈なのに,本当の家族といって遜色ない雰囲気がでていると思います.
はやてたちが,恭也と家族となろうとしている努力が実っているのだなと,恭也の心情からも伝わってきます.

一方で,向日葵,そして,多分夏というイメージを念頭に置いているのでしょうが,そのあたりの表現が弱いような気がします.
後半部分は,夏の暑さや,日差しといったものが感じにくいです.
暑いだろうというのは,説明などでわかるのですが,恭也の心情も前半同様のまったりとしたものですし,三人のセリフも前半の流れそのまま,という感じで,部屋の中から,強い日差しの下へ出たという場面転換が表現しきれていないかなと思います.
なんというか,小春日和みたいな雰囲気がして,どうも夏という季節感が感じられません.
ポカポカした昼下がりを演出しているのなら,まあ,間違ってはないとは思います.
地球の夏よりすごしやすいという事実も提示しているので,意図したものなのかも知れませんが,光輝く向日葵には,ちょっと不足かなと思います.

個人的には,後半部分にダッシュが多過ぎるのが,この雰囲気の原因かなと思います.
素直に句読点で区切って,テンポを良くした方が夏らしさは出たのではないでしょうか.
次回作では,そのあたりを留意してみると良いかも知れません.

以上,長文失礼しました.
次回も楽しみにしています.
Posted by mjd at 2007年08月07日 01:27
……和む。
撤退予告で荒んだ私の精神を癒してくれて、ありがとうございます。

ところで、八神恭也シリーズにおける紫の位置って何処ですか?
自分の独断的な解釈だと
恭也→ここでは父
シャマル→母
はやて→長女
ヴィータ→次女
ザフィーラ→番犬
シグナムは……長男かな?かつての恭也のポジションかな?絡んでないので、さっぱりとわからないがザフィーラの立ち位置だけは絡まずとも判る。流石はザフィーラ。
Posted by 濁みーん at 2007年08月07日 01:33
和みます、ホッとします。
心無い野郎共の誹謗中傷など気にせず、これからもこのような良い作品を書き続けてください。
このほんわかとした雰囲気は大好きです!!
Posted by ぬ人間 at 2007年08月07日 02:00
毎度ながら、良い仕事で…

とりあえず、(珍しくシャマルさんに)癒されたので、そろそろ寝るとしよう。

では、次回も楽しみにしています。
Posted by 月 at 2007年08月07日 02:27
少々荒んでいた心が落ち着きました。ありがとうございます。

恭也、はやて、シャマルの三人の「家族」という雰囲気がよく出ていたと思います。
各文末の句読点が付いていたり付いていなかったりするのが少し気になりました。

また次回も楽しみにしています。微力ながらも応援しています! では(礼
Posted by 三上刻夜 at 2007年08月07日 05:02
 頑固で一途な所が似ていると言われて慌てるハヤテの姿は、心の奥底にある家族と言う存在への強い憧れと、それが半ば満たされている現時点の幸せが見えるようで、凄くホノボノと優しい気持ちになれました。
Posted by かれな at 2007年08月07日 14:45
 うい、俺からの意見はまとめサイトさんの掲示板でやってますんで、良かった見てね。
Posted by 大岩咲美 at 2007年08月07日 21:54
文中の「父兄参観」「休日」であの時系列かぁと思い当たったり。
このシリーズではキャラのスタンスが好ましいなぁと思ってます。
「兄」として、あるいは「父」としてなのかな。
恭也がはやての手を握った場面で
「こちらの世界」でもそういう立ち位置を見つけられたんだと
微笑ましい、いや安心したのですよ。
kaguraさんの描く雰囲気はそういう意味で気に入ってます。

ただ、うん。
kaguraさんの書く話は心情を一人称で書くタイプですよね。
そのときに主体となってるキャラの地の文と会話文の区別が
混ざっているというか、区別いらないかなぁと思ったのですよ。
会話文が連続した際に混乱したこともあったので。
そこが私がひっかかる点です。

生意気な文も付け加えてしまいましたが
気に障るようならすみませんです。
でも、次回に期待してます。
Posted by アティ at 2007年08月07日 22:53
なんと言うか、此処だけ時間が緩やかになっているような、そんな印象を受けました。

八神恭也とはやてとシャマルさん。この3人がそろうと空気が和みます。いや、状況にもよるんですけどね(苦笑)
炎天下の夏、その昼下がりの公園での一幕……楽しませていただきました。
Posted by ソル=ブラッサム at 2007年08月07日 23:05
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